2011年10月1日土曜日

ユーロのインフレ率は3%より高くていい

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ユーロ圏の9月の消費者物価指数(HICP)が前年比3.0%に加速したので、ECBが金融引締めを行うと予測が出ている(REUTERS)。ECBのインフレ目標値は2%なので、引締めを行う可能性は少なく無いが、まだまだインフレを加速すべき理由がある。ギリシャがデフレだからだ。

Eurostatのデータから、2011年1月と2011年8月の消費者物価指数を比較してみよう。ドイツは1.83%増、スペインは1.80%増、イタリアは2.17%増、ポルトガルは1.54%増となっているが、ギリシャは-0.33%となっている。合算値を出すときにギリシャのウェイト係数は0.03841に過ぎないので、ギリシャのデフレはEU全体の消費者物価指数には反映されていない。

消費者物価指数の比較
2011年1月 2011年8月 インフレ率(1月~8月)
ドイツ 109.4 111.4 1.83%
ギリシャ 119.2 118.8 -0.33%
スペイン 113.5 115.6 1.80%
イタリア 110.4 112.8 2.17%
ポルトガル 110.7 112.4 1.54%

同じユーロ圏内の消費者物価指数のばらつきは、賃金水準の格差が広がっている事を意味している。ドイツの名目賃金は上昇しているのであろうし、ギリシャの名目賃金は下降している。膨大な赤字が問題になっているギリシャの貿易収支を均衡させるためには賃金格差の拡大は必須なので、調整方向としては妥当だ。しかし、ギリシャはデフレなので名目賃金が低下させており、雇用者と従業員の軋轢が高まっていると考えられるし、調整速度も遅いと考えられる。ゆえに、可能ならばギリシャの名目賃金が一定になる程度まで、インフレを加速するべきであろう。

ドイツの金持ちには“不公平”な経済状態になるわけだが、経済状態が大きく違う国で一つの通貨を持つ場合は、為替レート調整ではなく、痛みを伴う賃金調整になる事は統一通貨導入前に分かっていたはずだ。そして、同じ賃金水準の調整でも、名目賃金の切り下げは労働組合等の反対にあうわけで、インフレ状態にして実質賃金を切り下げやすくするほうが容易だ。もちろんギリシャ政府の債務返済の面からも、ドーマー条件から考えてインフレ気味の方が良いであろう。つまり、EUのインフレは加速した方が、ギリシャ経済のためには良い。

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