2011年5月14日土曜日

原発を停止の年間コストは1兆1387億円

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東海地震対策がされているはずの浜岡原発を政治判断で止めた菅政権だが、この要請に応える事によって、中部電力は3、4、5号機合計361.7万kwの発電能力を失い、燃料代で年間2,500億円の損失を被ると言われている(SankeiBiz)。この数字を元に、現在原発を停止している事による燃料費負担を概算してみよう。

1. 被災原発と浜岡原発の停止で年間1兆1387億円の損失

柏崎刈羽の停止中原子炉が330万kW、福島第一(5号機、6号機)が188.4万kw、福島第二が440万kWなので、東京電力は燃料代で年間6,624億円の損失を被る。また、東北電力は女川原発が217.4万kW、東通原発が110万kWなので、年間2,263億円の損失を被る事になる。東京電力、東北電力、中部電力の三社をあわせると、年間に1兆1387億円の損失だ。今回の原発災害での損害賠償金額が幾らになるかは未だに概算も出ていないが、三社の原発を政治判断で数年間停止すると、恐らく損害賠償金額を超える損失が発生する事になる。燃料費は電力料金に転嫁できる事になっているためか電力会社は強く主張しないが、損害賠償よりも追加の燃料費の方が経済的に深刻な問題となっている。

2. 浜岡原発の停止要請は、合理的『説明』を欠く

停止コストは膨大なので、被災した原発はともかく、浜岡原発の停止要請に対して困惑は大きい。元総務大臣の竹中平蔵氏が「電力需給、地元補償、他の原発との関係、など検討すべき多くの問題をすっ飛ばして、いかにも思いつきで政策が決められる」と批判している(@HeizoTakenaka)し、経団連・米倉弘昌会長も「思考の過程がブラックボックスだ。政治の態度を疑う」と批判している。

菅政権は他の原発は安全としているが、論理的には不明瞭だ。浜岡原発は、東海地震に備えて地震・津波対策が取られてきているし、福島第一原発の事故を受けての全交流電源・海水冷却機能・使用済み燃料貯蔵プール冷却機能喪失時の対策も取られており、政府はその安全性を適切と評価している。東海地震の発生確率が87%でも─原子力安全・保安院が信用できるなら─問題ない。信用できないなら、1%未満の地震発生率でも危険だ。

3. 仙谷由人官房副長官が語る、浜岡停止の理由

奇妙な政策決定だと思っていたら、仙谷由人官房副長官が、東海地震の想定震源域に建つ浜岡原発を止めることで、原発への不安を和らげたいとの狙いがあったことを認めたそうだ(毎日jp)。政治主導による世論操作が目的らしい。

しかし、4月16日、17日の世論調査の結果では、原発推進・容認派が56%となっている(asahi.com)し、原発への不安でパニックが起きているようには思えない。原発への不安を解消したいのであれば、厳密な事故調査と適切な対策立案を行えば良いだけであって、2年間で5,000億円の経済的損失を犠牲にする、安全性の向上に根拠の無い停止要請をする必要があるのかは甚だ疑問だ。

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