2011年3月10日木曜日

小飼弾が的を外した議論をしている高等学校情報A

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スクリプト言語Perlの日本語モジュールの整備で著名な小飼弾氏が『高等学校情報A』を批判している。だが、ブログに書かれた一部の情報NHK高校講座のページの文書から、高等学校情報Aの教科書の内容を推測し、教科書の内容から教育内容を推測すると言う二段階の推測を行ったため、憶測に基づく不確かな議論になっているし、そもそも日本語の読み違えをしているようだ。

1. 小飼弾氏の批判点

ブログを拝読する限り、批判点は次の二つのようだ。まず、拡張子とアプリケーションの対応関係など、瑣末的な知識習得は本質的ではなく教育に値しない。次に、失敗しないように情報発信を行う姿勢が、インターネットと文化的に一致しない。氏は、「リテラシーとは、正しい答えを出す事にあらず。その答えを、他人事ではなく自分事として扱えるようになることなのだ。」と主張している。

これは一見正しい批判だが、『高等学校情報A』を良く調べずに書いてあるので、的外れな議論になっている。

2. 高等学校情報Aの目標

高等学校学習指導要領 第10節 情報』によると、高等学校情報Aの目標は「コンピュータや情報通信ネットワークなどの活用を通して,情報を適切に収集・処理・発信するための基礎的な知識と技能を習得させるとともに,情報を主体的に活用しようとする態度を育てる。」とある。

少なくとも指導要領は、小飼弾氏の言う「他人事ではなく自分事として扱えるようになる」事が目標のようで、「な・に・も・わかっとらん!」とは言いすぎだと思われる。

3. 高等学校情報Aの言う失敗と、小飼弾氏の言う失敗は不一致

『NHK高校講座 | 情報A』と情報Aの教科書の内容が一致しているのかが問題なのだが、後述するのでこの点は置いておく。むしろ、NHK高校講座(≒情報Aの教科書)でいう「失敗」と、小飼弾氏の言う「失敗」が一致していない点が問題だ。

小飼弾氏の言う「失敗」は、正しくない操作方法や、インターネット関連企業の事業的な失敗を指している。NHK高校講座で言う「失敗」は、著作権の侵害や、名誉毀損や侮辱などの法的に問題のある行為を犯すことや、自分や知人のプライバシー情報を自らインターネットに公開してしまう事だ。

以下は『NHK高校講座 | 情報A 第7回 情報発信してみよう!』のキャプチャ画像なのだが、明らかに近年の社会問題を反映した内容になっている。

なお、司法共助協定を結んでいない第三国を経由したアクセスのケースなどの細かい点が気になる人もいるだろうが、高校生向けの授業なので省略していると思われる。また、MatrixのAgent Andersonの劣化3Dみたいなキャラクタや、眼鏡のタレントなど気になる点は多々あるが、本題とは関係ないので議論はしない。

4. インターネットにおける「失敗」は致命的

昨今の大規模掲示板における爆破予告による偽計業務妨害容疑での逮捕、Yahoo!知恵袋を用いた入試カンニング事件の偽計業務妨害容疑での逮捕、ラーメン店チェーン運営会社を中傷した名誉棄損罪での逮捕など、インターネットにおける失敗は枚挙に切が無い。

不用意に事を犯せば実社会よりも足がつきやすいインターネットなのだが、これらの失敗は無知が招いたとしか思えない行動も多く、児童・生徒に対する法的側面からのインターネット・リテラシー教育は時代の要請となっている。

小飼弾氏は「責任を負えるなら、いくら間違ったっていいんだ。」と主張しているが、責任を負いきれない失敗だから社会問題になっているわけだ。

5. 小飼弾氏の情報リテラシーは?

小飼弾氏が恐らく混同しているのだが、『高等学校情報A』と『高等学校情報Aの教科書』と『NHK高校講座 | 情報A』は別のものだ。

ある年度の『高等学校情報A』の指導要領の内容は、日本全国どこでも同じだ。しかし、教科書は各出版社で指導要領に従って作成しており、内容に差はある。『NHK高校講座 | 情報A』も同様に指導要領をベースにNHKが作成しているので、指導要領でも教科書でもない。

つまり、厳密に考えれば、ある教科書の内容で『高等学校情報A』を批判する事はできないし、『NHK高校講座』の内容で教科書や『高等学校情報A』を批判する事はできない。

事象を的確に分類することが情報リテラシーの一部であるならば、小飼弾氏の今回のブログのエントリーは、情報リテラシーが高い記事とは言えないと思われる。ただし、「いくら間違ったっていい」範囲の問題だ。

6. 『高等学校情報A』の問題点

『高等学校情報A』の趣旨はある程度理解できるのだが、その実現方法(教育内容)が適切では無いように思える。具体的な著作権侵害行為や名誉毀損、中傷行為を止めましょうと言うのは良いのだが、指導要領と『NHK高校講座』を見る限りは、具体的な著作権侵害行為や名誉毀損、中傷行為を説明していない

これらはその範囲を裁判で争ってきた内容であり、常識として認知されているわけではない。大半の生徒にとって、説明無しで理解できるものでは無いであろう。つまり、ケース・スタディが不足している。

拡張子やアプリケーションの使い方は実務で自然と覚えるものだ。小飼氏の言うように、検索すればすぐに分かる。しかし、法廷に出てから法解釈を覚えても間に合わない。失敗を責任が負える範囲にとどめるために、『高等学校情報A』では、もっと民事・刑事事件のケース・スタディを増やすべきであろう。

2 コメント:

Shion さんのコメント...

実際に高校時代に情報Aを必修科目で学んだ身ですが(といってももう5年くらい前になりますか)、具体的な著作権侵害行為などについても一応ですが教わりましたよ。

uncorrelated さんのコメント...

>>Shionさん
コメントありがとうございます。指導要領と『NHK高校講座』を見た限りなので、実態がちょっと分からなかったので参考になります。

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