反DEI界隈の人々が、どうも2025年1月のカルフォルニア山火事大規模化の原因は、DEI雇用されたウォークによってクラマス川からダムが撤去されて取水ができなくなったためだと主張している。
アメリカのMAGAの話*1を日本の反DEIの人々が請け売りしているわけだが、二重三重に話がおかしい虚偽であるので指摘したい。
つまり、
- 山火事のあったロサンゼルスとクラマス川は1000Kmぐらい離れており、ロサンゼルス市街はクラマス川からの水の供給は受けていない*2
- 消火活動で水圧が低下したことが問題になっているが、これは水道が同時に使われたためで水道網の構造に依存する問題であり、当時、水不足は生じていなかった
- クラマス川のダム撤去は、2011年に連邦議会で決定されたことであり*3、現在のカリフォルニア州の行政官の裁量で決まったことではない
- カリフォルニア州の行政官がDEI雇用であるかが分からない
ので、反DEI界隈の人々の話は奇妙なものとなっている。
なぜこのようなデタラメが吹聴されるのか? — 政治的なナラティブから事実を推察しようとする癖があるから。DEI雇用された者は無能で、DEIに熱心なリベラル州では色々な問題が生じているという物語を強く信じているので、こういう事になる。確証バイアス。
この確証バイアスは思ったよりも強烈だ。ある反DEIの人に、水道局長がクラマス川からの揚水ができなかったと会見で説明していると動画*4を提示されたのだが、動画を視聴したらクラマス川に対する言及はもちろん、川からの揚水の話も無かった。指摘したら認めてくれたので悪意はなかったと思うが、大きな確証バイアスがある。
DEI雇用された人々が、DEI政策によって弾き出された人々より能力に劣る可能性はある。しかし、女性や黒人などに対する偏見が採用や昇進に作用している場合は、偏見を相殺しているわけで、一概にそのように言えるかは分からない。また、仮に能力に劣るとして、すべての業務に対して著しく劣るとは限らない。
DEI雇用されていなくても無能という場合もある。トランプ大統領はカルフォルニア山火事に対処するために、サンホアキンバレーにある2か所のダムの放流命令を出し、同地域のかんがい用水路に放水が行われたが、同地域は山火事発生地域とは遠いので意味がなく、かんがい用水もこの時期には不要で、かつ水不足の季節に対する備えを失うことになった*5。
*1MAGA、カリフォルニアの山火事をDEIのせいにする | WIRED.jp
*2地図を見れば自明だが、January 2025 Southern California wildfires - Wikipediaに、"Southern California has never received water from those dams, which are over 500 miles north of Los Angeles County, with claims that the removal of the dams affected the South's supply being incorrect as the Metropolitan Water District of Southern California does not take water from the Klamath River area"とある。
*3ダム撤去でサケは戻るか? アメリカ | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト
*4𝕏/Twitterの添付で紹介されたのだが、同じ記者会見の動画がYoutubeにあがっていた(Janisse Quinones discusses LA’s water shortage amid historic wildfires. #LAWaterCrisis)。
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