2022年3月21日月曜日

サンプルサイズがそんなに無いときは、マイノリティのサブサンプルを除外するのは一つの方法

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巨乳好きは慈悲的性差別主義(benevolent sexism)と相関があることを示す研究(Swami and Tovée (2013))を引いて、巨乳好きと女性蔑視に相関があったと解釈するのはおかしいと言うnoteの記事*1で、サンプルからマイノリティを除外していることを非難している部分があるのだが、そのこと自体はそんなにおかしく無いので指摘しておきたい。

1. 非White Britishを除外しておいた方がよい理由
階層化サンプリングを用いる理由と同じだが、十分な観測数がないサブサンプルは誤差が大きくする傾向がある。非White Britishな白人は、出身・年齢・学歴などの属性が多岐にわたるが、その観測数は52しかない。White Britishは388。
非White Britishが保守的な集団であると、シンプソンのパラドックスが生じることもあるかも知れない。例として、乳房サイズ慣れをしておらず、慈悲的差別主義者が大多数の保守的な非White Britishを考えよう。非White Britishの慈悲的差別主義者も巨乳好きだが、White BritishがDカップを普通、Fカップを巨乳と認識している一方で、非White BritishはAカップを普通、Cカップを巨乳と認識する。こういう場合、White Britishのサブサンプルでも非White Britishのサブサンプルでも慈悲的差別主義者は巨乳好きと推定されるが、サンプル全体では慈悲的差別主義者は貧乳好きと言う結果が出ることもある。
非White Britishの基本統計量があれば、分析から排除すべき理由はもっと明確になっただろうし、エスニシティごとにクロス表をつくるとか、重回帰分析にエスニシティ・ダミーを入れるなど分析自体も工夫できたと思うが、除外するのも一つの手である。
2. 最初からWhite British以外を除外しなかった理由
「なぜ調査を最初からイギリス系白人男性に限定しなかったのかしら?」とあるのだが、サンプルをつくる段階でエスニシティを選ぶのは困難であったからと推察される。ロンドンで男性を集めれば、白人を狙ってもアメリカ人やドイツ人なども入ってしまうであろう。この研究でも自己申告ベースで除外している。
ただし、この研究、サンプルの作り方とBritish Whiteの定義が明確ではない。英国の国勢調査ではWhite Britishと言うエスニック分類があって、イングランド、スコットランド、ウェールズ、コーンウェルの土着民が入る。イギリス人の白人でも北アイルランド出身者は除外されるし、代々イングランドに住んでいても黒人だったら除外される。

こういうわけで、White Britishに絞ったことはおかしくないし、むしろ、観測の大多数がWhite Britishなのだから、White Britishに絞って分析をすべきとも言える。

もちろんWhite Britishに絞ったことが正当化できるかも知れないからと言って、この研究の結論の信頼性が高いことを意味しない。この論文、ロンドンの白人男性を対象に被験者を募ったというのだが、どういうサンプリングを行ったか書いていない。バイセクシュアルを除外する理由も不明だ。

ところでnoteの記事では「「日本人でも同じ結論になるだろう」と推測することは出来ない」とあるのだが、推測と言う言葉の意味*2を強く捉えすぎている。根拠が弱い推測もありえるので。「日本人も同様と断定は出来ない」ぐらいで。

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