2018年2月18日日曜日

縫製業を襲う労働節約的技術進歩

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人工知能がもたらす技術的特異点は雲を掴むような話だが、産業革命以後、連綿と続いている生産ラインの資本使用的技術進歩の影響は、労働者の差し迫った脅威になるかも知れない。具体的には、縫製自動機の技術進歩が目立っており、南アジアを中心とした開発途上国の縫製業に必要な労働者の数が減っていくのではないかと危惧されている*1

縫製業は代表的な労働集約産業であり、ここ何十年かの開発途上国の経済成長に大きく寄与してきた。他に産業が無くても、むしろ他に産業が無いからこそ、女性労働者などを大量に動員できる開発途上国では比較優位を持つ。工業化の第一歩となる軽工業の代表で、徐々に工場を国を跨いで移動させており、現在ではバングラディッシュでもっとも盛んだと言われている。

日本の友縫機械の製品は、一日の訓練で労働者を生産に従事させられる。(WSJの動画では触れられていなかったが)島精機製作所のニットマシンは、手袋や靴下はもちろん、最近は縫い目の無いセーターを作り出す。これらの機械は価格が高いので広く普及はしていないが、米Software社の全自動ラインは、米国で最貧国と同等のコストでTシャツなどを生産可能にするそうだ。バングラディッシュは比較優位を失う*2

世界銀行の予測では、年に200万人と言う労働供給の拡大にも関わらず、縫製業の新規雇用者数は30万から6万人に減少し、さらに労働節約的技術進歩が真の力を発揮すれば、縫製業従事者の85%が職を失うと言うブラウン大学のCarrie Nordlund教授の予測もある。縫製業に従事する女性は貧困家庭の唯一の収入源であったりするので、その影響は甚大だそうだ。労働者が出来る事は限られるので、他に仕事を探すというか作るのは大変である。

この手の悲観的予測がここ何十年かで当たった記憶は無いのだが、人工知能が技術的特異点をもたらし桃源郷に到達するという話よりは、切羽詰った感じはする。伝え聞く工場のラインの立ち上げのドタバタ話を聞く限り、そうは簡単にはいかない気がするが。

*1How Sewing Robots May Put Human Hands Out of Work | Moving Upstream

*2記事の方ではバングラディッシュの工場が機械化をしているので、工場の立地が変わるとは限らない。戦前の日本も紡績産業も、相対的に低い賃金に関わらず、資本装備率は高かった。

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