加熱式たばこを含む電子たばこ(vapour)によるエアロゾル、言わば間接喫煙に関する関するサーベイ論文*1が紹介されていた。無害とは言えないような論調なのだが、そのエアロゾル暴露リスクは、従来式の燃焼たばこによる副流煙の健康被害に比べて小さいとある。サーベイ論文の参照先の論文を見ていくと、エアロゾル内の有害物質の量は、大雑把に10分の1と段違いに小さい。
電子タバコが出す汚染物質はニコチンで評価して、燃焼タバコの10分の1に過ぎない*2。フェノールとカルボニルで評価すると、電子タバコに有害性は無い*3。PM2.5などの粒子状物質で評価しても10分の1未満*4。職場の小部屋での電子タバコの使用で、問題のあるほど空気は汚染されない*5。有害物質全体で見て10分の1だが、ニッケルと銀の排出量は多い云々*6。ごく微量のニッケルと銀が人体に著しく有害と言うわけでも無い限り、加熱式たばこからの間接喫煙の有害物質の暴露は圧倒的に少ない。
燃焼式たばこの間接喫煙と同様の危険性は主張できない。そもそも間接喫煙の健康被害も、個別のコホート研究ではなかなか観察されないし、ヘビー・スモーカーの夫を持つ妻ぐらいまで限定しないと有害性を示す研究は無くなりかねない。国立がん研究センターのプレスリリースで紹介されたメタアナリシスは9本の研究をつなぎあわせて有害としていたが、統計的に有意に有害としているのは9本中2本で、その2本もヘビー・スモーカーの夫を持つ妻のものである。これの10分の1の汚染程度で、健康被害までつなげる事には無理を感じる。動物実験によって有害と示されたわけでもないようだ。
加熱式たばこでも臭いと言えば臭いらしいし、喫煙所以外の場所で利用を禁止する正当性はあるし、子どもが同じ室内にいるときは予防的に吸うのは避けるべきと言うのに問題は感じない。しかし、加熱式たばこのエアロゾルでも周囲に健康被害をもたらすと言われると、話が大げさになっているきらいがある。統計学的に厳密に考えすぎて健康被害が拡大するリスクを無視していると思う人もいるかも知れないが、偽科学の類を統計的有意性が無いことで切り捨てるポリシーから言うと、肯定的には受け止めづらい。
*1A systematic review of the health risks from passive exposure to electronic cigarette vapour - PHRP
*2Secondhand Exposure to Vapors From Electronic Cigarettes
*3Comparison of Select Analytes in Exhaled Aerosol from E-Cigarettes with Exhaled Smoke from a Conventional Cigarette and Exhaled Breaths
*4Comparison between particulate matter and ultrafine particle emission by electronic and normal cigarettes in real-life conditions | TJ
*5An Assessment of Indoor Air Quality before, during and after Unrestricted Use of E-Cigarettes in a Small Room. - PubMed - NCBI
*6Particulate metals and organic compounds from electronic and tobacco-containing cigarettes: comparison of emission rates and secondhand exposure. - PubMed - NCBI
1 コメント:
コメント失礼します。
内容が加熱式タバコではなく電子タバコ(Vape)のみの話だと思います。
なのでタイトルもそうですが、冒頭の『加熱式たばこを含む』は内容的にはなくてもいいと思います。
(2つは別々のものなので)
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