2014年5月2日金曜日

スズメ減少説のその後が分かる『スズメの謎:身近な野鳥が減っている!?』

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四年前ほどにスズメ減少説が広く報道された*1。当時は減ったらしいと言う以上に確定的な事は分かっていなかったのだが、問題提起を行っていた岩手医科大学の三上修氏が研究を進めていき、情報が整理されたようだ。学術論文にだけでは無く、『スズメの謎:身近な野鳥が減っている!?』と言う一般書で研究成果の概要を紹介されていたので拝読してみた。ええ、2012年12月に出版されていたのに、一昨日まで気付かなかったのですよ。中は児童書的な装丁にも関わらず、スズメ減少とその要因だけではなく、研究動機、研究方法とその難しさについても丁寧に書かれた包括的な本になっている。情報を冷静に考えて欲しいと言う、著者の思いが垣間見える気がした。

1. スズメ減少は多面的に示される

最初はスズメの個体数を単純に測定する研究だったそうだが、研究への反響を受けて個体数の変化にテーマが移っていったそうだ。信頼性の高いデータは存在しない中、著者は「自由学園で観測されたスズメの個体数の変化」「農業被害面積と水稲田の作付面積」「駆除・捕獲されたスズメの数」「スズメ分布の変化」「標識調査で捕まったすべての鳥のうちのスズメの割合」と言う複数のデータから、スズメ減少説が有力である事を示している。

2. 減少の理由は執筆時点で研究中

スズメ減少説の根拠が固いことを確認した後、その原因についての考察について話が進む。これについて著者は結論は下していないものの、都市部においてスズメの少子化が確認された事を紹介している。街中では、舗装などが進み空き地が減ったため、たんぱく源となる昆虫を捕まえることが難しいのが原因だと推測されるようだ。また、人家の形態が変化したので営巣可能箇所が減少した事も指摘されている。氏の研究業績を見ると2013年に「日本におけるスズメ個体数の減少要因の解明:近年建てられた住宅地におけるスズメの巣の密度の低さ」と言う論文を出しているので、本書が書かれた時点では強い断定が出来なかったのであろう。

3. スズメ減少が社会に与える影響は?

一般書だけに、スズメの減少が社会に与える影響の考察もされている。ここの議論も慎重だ。例えば農作物に被害を与える害鳥であると同時に害虫を食べる益鳥でもあることから、農業に与える影響は多面的であると議論されており、さらに現在までの減少による影響は統計的に明確ではない事が述べられる。保護をするかについてはさらに慎重で、スズメがすぐに絶滅することはなく、他の鳥類の保護と比較して優先すべきかは分からないそうだ。そんな事を言いつつ急激に減少して絶滅したリョコウバトをコラムで紹介しているわけだが、社会的影響を見積もり、保護の是非を示すのは本当に難しいのであろう。

4. 小学生に読んでもらいたい

実行するにしろ、結論を出すにしろ、研究につきものの難しさが分かりやすいレベルで書かれている本で、テーマが身近なこともあり、大人もそうなのだが、小学生が読むととくに勉強になると思った。装丁は児童書だし、著者もそういう狙いがあるのであろう。まだ研究途中でスズメ減少の要因が強く主張されていないところが打ち切りになった少年漫画的な悲しさがあるので、著者にはそこを改訂したバージョンをいつか出す事を期待したい。

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