大飯原発の再稼動差し止め判決について、経済評論家の池田信夫氏が法治国家を否定する発言をしている。曰く、「運転を差し止める権限は裁判所にはない」「停止命令を出せるのは、原子力規制委員会だけ」だそうだ。
民事訴訟で建設・操業差止請求を出すことは出来ること、即時抗告をすれば確定遮断の効力があるので地裁の命令を無視できるだけなことを分かっていないようだが、以前の氏の論調から考えると、反原発派が司法を利用した事を評価すべきでは無いのであろうか。
2012年5月の「日本は法治国家なのか」と言うエントリーを見てみよう。法的根拠が欠如した曖昧な手続きによる政府や地方自治体の「行政指導」を批判している。一方で、妥当な法律の解釈による判決かは大いに疑問がある*1が、今回の福井地裁の樋口英明裁判長の判決は、裁判判決なのだから厳密な手続きで法的根拠を無理矢理にでもつけたものなのは間違いない。
池田信夫氏の日本人は法の支配を理解していないと言う批判と、池田信夫氏が日本人であると言う事実から演繹すると、池田信夫氏が法的手続きを軽視していてもおかしく無いわけだが、自虐的な冗談では無いと思う。「原発再稼動が正しい」と言う結論があって、それをサポートするように理由らしきモノを粗雑に並べ立てている*2から論が混乱してくるのであろう。それは「原発再稼動は間違っている」と言う結論があって、それをサポートするように理由らしきモノを並べ立ててくる反原発派と同様の考え方になっている。
反原発デモを見ると反原発デモに中核派と革マル派と全共闘などが勢ぞろいしているし、池田信夫氏もマルクス経済学を基本に物事を考えているらしい*3ので、バックグラウンドは共通なのかも知れないが、とにかく対立構造をつくって非難しあう姿勢は非建設的に感じる。そういう性格に生まれた人が、マルクス経済学に寄せられるのかも知れないけれども。
*1過去の同種の裁判では、一審で原発の運転停止が認められても、二審で覆されてきている(NHK)。
*2関連記事:池田信夫さん、摂取量、頻度、確率は全て異なる概念ですよ
*3学生時代にマルクス経済学にかぶれていたと言うツイートをしているのだが、今でもマルクス経済学の用語と考え方を隠さずに用いているし、最近は近代経済学(≒新古典派経済学)に現実説明力が無いと主張しているようだ。
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