2011年5月8日日曜日

東海地震の発生『確率』に振り回される官邸

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菅首相が浜岡原発の全面停止要請を行った。経済産業省の発表によると、浜岡原発の地震・津波対策は経済産業省・原子力安全・保安院が適切だと評価しているが、東海地震に備えてさらなる準備ができるまで、浜岡原発の全面停止を要請するものだ。原子力安全委員会の勧告でも無いし、法に基づく停止命令でもないので菅内閣の独断だと思われるが、東海地震の発生『確率』に振り回されている感が否めない。そもそも地震の発生確率に、学術的な強い根拠が無いことを誰か進言するべきであろう。

1. 発生確率87%は統計学的根拠を欠く

地震調査研究推進本部の地震学の権威が発生確率87%を主張しているが、これが統計学的に非常識極まりない数字となっている。

東海地震は、684年、887年、1096年、1498年、1605年、1707年、1854年に発生したと考えられている。地震発生の間隔は、203年、209年、402年、107年、102年、147年とまばらだ。そしてサンプル数が少ないので、分布モデルの確定もできない。

分布モデルの確定ができない場合、統計学的な確率計算が不可能か、膨大な誤差を生じる結果となる。予測モデルの検証ができないためだ。

2. 19世紀までのサンプル数7から出せる確率

過去の東海地震は江戸時代までさかのぼる。地震計も無い時代でマグニチュードや震度、震源の誤差が大きいのは明白だ。予兆になる量的データなどは一切残っていない。直下型であれば断層、津波であれば地層から分かる事もあるだろうが、東海地震の震源は沖合だと考えられている。分かっているのは、発生年だけだと思ってよい。

発生年と、良く用いられている統計モデルから今後30年間の発生確率を予測してみよう。何か分布を仮定し、過去の発生確率を当てはめれば予測モデルができる。どちらも学術的な根拠は無いので信用するに値しないが、過去の発生年度からわかる周期性は、この程度のものでしかない。

以下は、周期性を仮定した対数正規分布と、全く周期性を仮定しない指数分布を当てはめたもので、ピンク色の部分が2011年から30年間の発生確率となる。

既に経過した年月に発生する事はあり得ないので、ピンク部分を、ピンク部分とピンク部分の右側で割ったものが、今後30年間での発生確率となる。周期性を仮定した対数正規分布モデルで40.2%、全く周期性を仮定しない指数分布で14.2%の発生確率となる。仮定する分布で、発生確率は大きく変化する

地震調査研究推進本部の仮説モデルが、どのような分布を仮定しているのかは分からない(分布図も公表されていない)。しかし、一般的な確率分布よりも強烈な周期性を仮定している事が分かる。

3. サンプル数7では統計学的な検証も不可能

強い仮定には、より厳密な統計学的な検証が不可欠だ。しかし、統計学的にもっともらしい分布を選択するには、ある程度のデータ数が必要になり、サンプル数7は明らかに不足している。

データ数が少ない場合は正規分布などの普遍性のある分布、もしくは正規分布の派生であるポアソン分布、指数分布、対数正規分布などを仮定することが多い。地震調査研究推進本部がどのような分布を導出しているのかはわからないが、一般的に使われているものとは大きく異なるのは明らかだ。そして、サンプル数7では、その分布が妥当であるか検証もできていないと考えられる。

4. 地震調査研究推進本部は予測を外す

周期性や予測可能性は、東京大学のロバート・ゲラー教授(地震学)の批判の通り、ほぼ不可能に思える。今回の東日本大地震が地震調査研究推進本部の予測を超えていたのは言うまでもない。阪神大震災と新潟県中越地震も、地震調査研究推進本部の言う空白地帯で発生していた。地震調査研究推進本部の予測は良く外れる。

学術的には外れるのはやむを得ない。既に予測可能であれば研究する価値がないからだ。しかし、それを元に政策的決定を行うのは妥当とは言えない。

5. 東海地震発生時の浜岡原発の被害程度は議論されていない

東海地震が発生したら、浜岡原発が壊滅すると言う理由ならば説得力があるのだが、東海地震発生時の浜岡原発の想定被害程度は議論されていない。

869年の貞観地震以来の規模の災害となったが、福島第二と女川原発の被害程度は小さかった。地震と津波の発生で、即福島第一と同程度の被害となるわけでは無い。浜岡原発を停止するべきか否かは、東海地震が発生したときの浜岡原発の被害程度に大きく依存する。

福島第一のような状況を想定しているのか、福島第二や女川のような状況を想定しているのかで停止措置の必要性は変わるわけだが、東海地震発生時の浜岡原発の想定被害程度は議論されていない。

6. 東海地震発生確率87%を理由に停止要請をする愚行

原発は、1%でも、0.1%でも、予測される災害規模に対応を行う必要がある。ゆえに想定される災害規模に対して対策が十分か、不十分かで原子力安全・保安院は電力会社の監督を行ってきた。そして想定は度々改定される。

浜岡原発は2005年から3年間で耐震補強工事が行われており、福島第一原発の災害・事故を受けて、全交流電源・海水冷却機能・使用済み燃料貯蔵プール冷却機能喪失時の対策も取られている。ゆえに、原子力安全・保安院の安全基準が正しければ、今後30年間で100%東海地震が起きるとしても浜岡原発は稼動してもいいはずだ。安全基準が正しくないと判断するのであれば、安全基準を改定すれば良い。

実際に福井県知事や宮城県知事は原発の安全基準の見直し求めており、福島第一、福島第二、女川の被害状況などから安全基準を見直すのは当然に思える。しかし、安全基準の見直し無しで、浜岡原発だけ突然の2年間の停止要請を行うのは理解に苦しむ。

3 コメント:

NINE さんのコメント...

>浜岡原発だけ突然の2年間の停止要請を行うのは理解に苦しむ
2年間だけ?全面停止ですよ。

・地震学者の言い分は根拠がないと信じない割に、今回ひどい体たらくを晒し続けている原子力安全・保安院の安全基準を信じる意味が分かりませんね。

いつ地震が起こるかどうかなんてどうでも良くて、仮に地震が起こった場合、浜岡原発は地震断層の真上という世界的にも例のない危険な場所に立っているという事実から止めるべきという話ですよ。
ちょっと論点がズレていませんか?一度、浜岡原発反対のサイトでもご覧になってください。

uncorrelated さんのコメント...

>>NINEさん
コメントありがとうございます。
原子力安全・保安院の安全基準が疑わしいのであれば、その安全基準の改正から行うべきだと言う主張です。
また、今回の全面停止要請では地震断層上にあるか否かは言及されていませんし、現在計画されている津波対策が終わるまでの全面停止要請となっているはずです。これが実質2年間ですね。

NINE さんのコメント...

ありがとうございます。
確かに”現在計画されている津波対策が終わるまでの全面停止要請”でした。
失礼しました。私こそ論点がずれていました。
(この一文がないニュースが多いので誤解していました。)

「この2年に特別な科学的根拠があるのか」というご指摘なんですね。ここに反論は出来ないですね。地震予測なんてそもそも疑似科学状態なんじゃないですかw?

願わくば、最初は津波対策を理由にして止めさせ、あとは政府お得意の問題先送りでずるずる無期限停止にしてもらいたいところですが、そんなニュースの裏側はないですかね?
そんなの社会科学的ではないかw
もちろん止めさせる分の補償は必要でしょうね。原発推進してきたのは国なんですから。

地震を止めるか、放射能を無毒化出来れば安心するんですが。

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