2011年1月18日火曜日

信念に基づき民主党を壊す菅直人

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経歴からは誤解されやすいが、現在の菅首相は財政問題に強い関心がある。

夏の選挙でも消費税導入を訴えていたし、相続税の増税方針を決め、費用のかかる民主党のマニフェストの実行は無期限延期になっている。税収を増やし、支出を減らすのだから、財政再建が菅内閣の優先課題の一つであることは間違いない。

ところが世論調査ではそれらの政策が支持されているが、面白いことに支持率に結びついていない。実行能力に疑問があるからだ。

1. 菅政権の“党の公約にできない”政策課題

菅政権の政治目標が、消費税率アップと環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加であることは間違いない。消費税増税論者である与謝野馨氏、自由貿易論者の海江田万里氏と玄葉光一郎氏が内閣に入った事から、強く推進していく方針であることは確実だ(The Economist)。

しかし、この方針は簡単には党の公約にはできない。

2. 小沢一郎は菅直人の方針に反対している

民主党内の最大派閥は、小沢一郎氏の支持者たちなのは間違いない。党の重要人物の小沢氏だが、かつては消費税10%を訴えていたものの、近年は消費税率維持を訴えているし、農家に一定の打撃をもたらすTPPにも反対の姿勢を示している。世論調査では国民に不信感を持たれている小沢氏だが、民主党の党首選では200人の国会議員票の支持を得た。過半数にはいかないものの、不利な状況でも党内に強い影響力を持つ。菅首相も小沢氏の意向を無視した公約は、作成しづらいはずだ。

3. 鳩山由紀夫も菅直人の方針に反対している

民主党の両雄で、今でも一定の影響力を持つという鳩山由紀夫氏も菅政権の方針には反対だ。反対のポイントは小沢氏とはやや違い、支出削減による2009年衆院選のマニフェスト不実行が不満のようだ(Foresight)。消費税については、過去には必要性を訴えており、現状では国民の理解を得られないと主張している。鳩山氏は民主党が衆院選で大勝したときの党首であり、菅首相も無視できない存在のはずだ。

4. 菅直人は、小沢一郎と鳩山由紀夫と政策が一致しない

他の点でも、菅首相と小沢・鳩山の両氏は政策が一致しない。小沢氏と鳩山氏は外交は親中路線であり、親米路線の菅首相とは異なる。小沢氏の証人喚問問題も、小沢氏と鳩山氏は拒否の方針だが、菅首相は政治倫理審査会という妥協案を提示している。

菅首相は就任時に、自民党に替わりうる政党を作り、二大政党制を実現することが目標だったと述べていたが、恐らく三者で意見が一致したのは反自民勢力が必要だという政治体制の点だけであって、経済・外交政策においては何ら意見の一致を試みてこなかったのだろう。

菅首相は、民主党内で菅首相以上に影響力があるとされる小沢氏と鳩山氏が反対している政策を、実行しようと努力している。

5. 世論は菅政権の方針には賛成

消費税増税とTPP、そしてマニフェストの修正に関して世論は概ね賛成している。

消費税は、世論調査では61%が賛成だ(YOMIURI ONLINE)。日本経済団体連合会も、強く賛成している。

TPPは、世論調査では57%が賛成であり(毎日jp)、中小企業経営者に限ると83%が賛成だ(IBTimes)。

マニフェストの修正に関しては、8月以降の世論調査では70~80%が容認派だ。直近の世論調査でも、78%が修正を支持している(毎日jp)。議会制民主主義の原則としてはマニフェストの変更は望ましくないと主張する人もいる(東洋経済)が、実行されたら困ると思う人の方が大多数のようだ。

6. 自民党は、菅直人と政策的に近い

自民党は、菅直人と政策的に近い。

消費税増税は、自民党はマニフェストに掲げており、自民党総裁の谷垣氏の悲願でもあるため、反対する理由は無い。TPPは、都市部選出の国会議員や商工族を中心とする積極派と農業団体を支持基盤とする慎重派に分かれており、意見は集約されていないようだ(日経)。マニフェスト自体は批判しているので、修正や無期限延期は、消極的には賛成と言う事になるはずだ。親米外交路線や、普天間基地移設問題の立場も、そもそも自民党の路線であり立場が近い。

7. 信念に基づき民主党を壊す菅直人

政策は世論に支持されている。最大野党は賛成派だ。党内に反対派がいる。これが菅内閣が置かれた立場だ。世論調査で政策遂行能力が疑われるのも無理はない。

しかし、参院選期間中にぶれがあったものの、菅首相の政策的方向性は一貫している。政策への世論の支持を背景に、自民党の協力を得ることで、法案を通しにかかるようだ。党外から与謝野氏を抜擢したのは、決意の表れであろう。

もちろん、小沢・鳩山両氏との対立が深まる事になる。菅首相は両氏の支持者の切り崩しを狙う予定であろうが、小沢氏支持者の結束は特に固い。法案成立と引き換えに、場合によっては法案成立前に民主党が瓦解する事もありえるが、小沢・鳩山両氏の発言を菅首相は気に留めていないように思える。政治の世界は百鬼夜行なのでどうなるかは分からないが、このまま行くと政界再編は避けられ無い。

8. 歴史的には、政界再編は当然

世界史的には、大きな政策的な焦点に対する立場で二大政党制は形成されてきた。しかし菅首相と小沢・鳩山の両氏とは意見が一致しているように思えない。現在の民主党の状態は不自然だ。一方の自民党内でも、農業政策で意見が集約されている分けではなく党内に対立は残っている。

意見が同じ議員が対立関係にある政党に別れていたら、通る法案も通らない。もっと政策を中心とした、自然な二大政党が作られた方が、迅速な意思決定のできる望ましい政治になるだろう。

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