2010年7月17日土曜日

「たばこ税」に関して知っておくべき10のこと

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2010年10月から、たばこ税が増税になることが決まっている。増税幅も4割と比較的大きいもので、JTもタバコの値段を引き上げざるをえず、愛煙家にはショックが広がっている。政府は取りやすい所から増税を行っている、大幅な増税はタバコの売り上げを減少させ、結局税収を少なくするなどと議論されているが、身近なものだけに基本的な情報を見過ごしていることが多い。そんな「たばこ税」について、知っておくべき10のことをまとめた。

1. たばこ税には、国たばこ税、たばこ特別税、道府県たばこ税、市町村たばこ税がある
名前の通り国と地方自治体でたばこ税は分け合っており、総額で約2兆円と大きな政府収入になっている。たばこ特別税は、日本国有鉄道清算事業団(旧国鉄)及び国有林野事業特別会計の負債の償却目的で設立されたが、現在でも引き続き存在している。
2. 現在のたばこ税は、消費税と同時に誕生している
1985年に、日本専売公社の民営化に伴い日本たばこ産業株式会社(JT)を設立したため、国が徴収する「たばこ消費税」が創設された。このときは、従価課税と従量課税の両方の方式があった。1989年の消費税の導入とともに名称が「たばこ税」に一本化され、従量課税に一本化された。なお、地方たばこ税はもっと歴史があり、昭和29年に地方税法に組み込まれている。
3. たばこ税は増税され続けている
たばこ税は増税されている。1988年度と2010年度の税制改正は増税幅は大きいが、他は比較的ゆるやかな増税である。
2006年~2009年は、1本あたりの税額は、国たばこ税が3.552円、たばこ特別税が0.82円、道府県たばこ税が1.074円、市町村たばこ税が3.298円である。2010年10月からは、国たばこ税が5.302円、たばこ特別税が0.82円、道府県たばこ税が1.504円、市町村たばこ税が4.618円となる。
4. 他の先進国と比べて、日本のタバコ税率は安い
イギリスでは1本あたりのタバコ税は21円程度(1£=135円換算)となっている。2011年からの増税でも、日本はその水準に達しない。フランスも20円程度、ドイツでも17円程度(2005年)、米国は地域によって落差は大きいがニューヨーク市で26円程度(2010年7月)となっており、概ね日本のタバコ税は安いと言える。
5. 喫煙率は減少している
男子喫煙率は、1990年で60.5%だったのが、2009年には38.9%まで減少した。女性の喫煙率は14.3%から、11.9%まで下落しているが、年度によって増減を繰り返しており、一貫した減少傾向であるとは言えない。下は厚生労働省がJTのデータを元に作成したグラフだが、男性は前年代で昭和40年代から喫煙率が低下し、女性は90年代まで若年層の喫煙率が増加したあと、減少傾向に転じたことが分かる。
6. 喫煙者の1日の喫煙本数は変化が無い
喫煙者人口あたりの紙巻たばこ販売数は、過去20年間のデータでも26~27本/日と安定しており、ほとんど増減が無い。この間に何度もタバコの価格が引き上げられている事から、喫煙者はタバコの価格はほとんど気にしていない事が分かる。
なお、2006年の全国喫煙者率調査のアンケートによる喫煙者の1日の喫煙本数は男性は22.3本/日、女性が16.3本/日となっており、上述とやや異なる数字となっているが、こちらも大きな年次変化は無いようだ。
7. タバコの社会的コストは5兆円
国立がんセンターの後藤氏の試算によれば、タバコによって医療費3兆2000億円、損失国民所得2兆円、休業損失2000億円、消防・清掃費用2000億円、合計で5兆6000億円の社会的損失が発生しており、税収を大きく上回るデメリットがあるらしい。タバコの人体への害の大きさは、まだ正確に測定されているわけではないから、この数字に大きく誤差があるのは確かだが、タバコの社会的コストは看過できない水準であろう。
8. 他の先進国と比べて、日本の男性の喫煙率は高く、女性の喫煙率は低い
OECD Health Data 2010の2009年以前で扱える各国の最新データでの順位では、日本の男性喫煙率はOECD諸国の中で6番目(38.9%)に高く、女性の喫煙率は31番目(11.9%)である。大半の国が2008年以前のデータしか扱えないので注意は必要だが、男性の喫煙率が高く、女性の喫煙率は低い傾向が見て取れる。
先進国は喫煙率に性差が少ない。フランスは男性が14位(30.6%)で女性が7位(22.3%)、英国は男性が26位(22%)で女性が9位(21%)、ドイツは男性が18位(27.9%)で女性が14位(18.8%)、米国は男性が32位(17.9%)で女性が28位(15.1%)、デンマークは男性が18位(18%)で女性が29位(14%)である。
日本より男性喫煙率が高いのは、チリ、ギリシャ、韓国、メキシコ、トルコ。逆に日本より女性喫煙率が低いのは、トルコ、ポルトガル、韓国である。韓国とトルコに日本と共通した性差が大きい傾向が見られるのは、文化的な影響があるのかも知れない。
9. 喫煙者の肩身は狭く、公共の場での喫煙は制限され、非喫煙者は増税に賛成
喫煙者なら肌身で感じていると思うが、歩きタバコの禁止、都内の駅構内での全面禁煙・喫煙スペース撤去など、海水浴場での喫煙禁止、飲食店の分煙化の徹底など、近年は公共の場での喫煙が年々と難しくなっている。国際的にはこの傾向は同じで、イギリスではパブも全面禁煙となっており、ブータンは国全体で自宅以外は禁煙で、タバコの売買も禁止である。
また、非喫煙者はたばこ税の増税には賛成している。Cross Marketingの「たばこ」に関する調査では、元喫煙者を含む非喫煙者の76%以上が増税に賛成しており、喫煙という習慣は非喫煙者の理解を得てない事が分かる。
10. 愛煙家はタバコを吸う、命がけで。
禁煙成功率は5~10%と言われ、タバコの中毒性は広く知られている。病人でも辞められないのは同様で、酸素吸引中に喫煙し酸素で急激に燃え広がったタバコの火で火災が発生する事故が多発しており、6年で26人が死亡している。禁煙で慢性ストレスが軽減するとも言われており、タバコを吸う理由は特に無いはずだが、中毒者は死ぬまでやめられないのが実態のようだ。

まとめ

最近の傾向から言うと、喫煙者に風当たりが強い世の中なのは間違いない。タバコが原因の医療費負担は大きいと理解されており、国際的にも喫煙は否定的に捉えられている。取りやすい所から税金を取っているというのは、あながち間違いではないであろう。

しかし、JTが言うような税率と喫煙率の関係は余り明確ではなく、税率と一人あたりの消費本数が完全に無関係であることから、たばこ税に関係なく喫煙者は減っており、たばこの販売本数もそれに応じて落ちているだけのようだ。今回の程度のたばこ税の増税処置では、中毒性の高い命をかけて喫煙をする愛煙家は、やはりタバコを吸い続けるであろう。平均で1日に80円、月に2400円の増税でしかないのだ。経済学で価格と需要量が関係ないことを、価格の需要弾力性が無いと言うが、まさにタバコは典型例。増税による税収増は、今回も期待できる。

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