テロが横行する最近は、全身を覆い隠して顔や所持品を分からなくするイスラム女性の服装は、各国の安全対策の担当者にとって頭の痛い問題になっている。戦場では男性兵士がイスラム女性の服装をして、武器を隠し持ったまま敵を欺く事も発生しているとされ、イスラム社会の反感を買ってでも、厳しくボディー・チェックを行わざるをえないようだ。
しかし、全ての伝統風のイスラム女性が顔を隠しているわけでは無い。イスラムは一体感の無い文化なので、女性の服装も国や地域やイスラム法学者によってまちまちに規定されている。実際にどのような服装が存在するのか、大雑把にまとめてみた。
1. ヒジャブ(hijab)
スカーフのような布で頭髪を隠すもので、顔は露出させている。アラブ諸国で一般的。フランスでは宗教的シンボルであると学校等の公共の場での着用が禁止されており、内外のムスリムから反発を受けている。
2. ツドン(tudung)
マレーシアとインドネシアのtudungは、hijabとほぼ同じものに見える。カラフルなものが多い気がする。
3. アル・アミラ(al-amira)
ツーピースのヴェールで、体にフィットした帽子とチューブ状のスカーフで構成されており、顔は露出させている。
4. シェイラ(shayla)
長方形の布で、頭を覆い、肩で折りたたむかピンで留めて使う。顔は露出させている。湾岸地域で用いられている。
5. ヒマール(khimar)
頭から腰の上まで覆うヴェールであり、顔は露出させている。
6. チャドル(chador)
全身すっぽりと布と覆い尽くすが、現在では顔は露出させているものである。イランで用いられている。
7. ニカーブ(niqab)
全身すっぽりと布と覆い尽くし、目だけを外部に露出する服装である。ペルシャ湾岸のアラブ諸国で一般的で、最近はエジプトでも見かけるらしい。
中央アジアで用いられているニカーブは、パランジ(Paranji)と呼ばれており、馬の毛で作られていて、かなり重量があるらしい。
8. ブルカ(burka)
ニカーブの一種で、目の部分も網状になっていて完全に隠れている。アフガニスタンで用いられている。
安全のために許容される範囲
本人識別と、危険物の所持が大雑把に確認できるレベルであればいいと思うので、シェイラかヒマールまでは問題無さそうだ。チャドルの場合はボディーチェックを厳しくしても武装の有無が分からないので、警察などには危険が大きくなるであろう。ニカーブやブルカでは、性別の識別もかなり難しそうだ。戒律の厳しく危険な地域ほど、より露出度の少ない服装になっていくので、伝統と安全のバランスをどう取っていくかは常に難しい問題を抱えている。もっとも同じ地域でも時代で戒律もかなり異なるし、ビジャブ着用者とチャドル着用者が並んで歩いている写真もあるので、許容範囲に幅もあるようだ。テロで死にたい人はそんなにいないであろうから、東南アジアや湾岸諸国程度のドレス・コードで落ち着くとは思う。
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