2010年6月16日水曜日

JAXAの長期ビジョンから消えたもの

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「はやぶさ」の成功で、その活動が一気に評価されたJAXA(宇宙航空開発事業団)だが、本当に大事な技術開発については活動を縮小してしまっている可能性がある。その大事な技術とは、飛行船の事だ。

最近の航空宇宙技術は、概ね実用性重視で進んでいる。主に無人機の開発が進んでいるし、有人機も燃費や低騒音、安全性が重視されている。JAXAが目標にあげる超音速機などは、コンコルドが燃費や騒音や安全性の問題で運用されなかった事からも、あまり期待されていない。

実用的に有望な技術開発も色々あるのだが、もっとも地味で実用性が高いもののひとつが、無人飛行船であろう。気球の浮力と翼の揚力を組み合わせたハイブリッド型などが、注目されている。燃料消費は固定翼機の3分の1で、長い後続距離や積載量を期待できるためだ。また、固定翼機(飛行機)に比較して定点に留まる能力が高いので、偵察や探査に向いているのだ。実際に先日、米軍はノースロップ=グラマンに新型飛行船の発注を行った(左図)。米軍はWalrus HULA計画として、新型飛行船に積極的に投資を行っている。

軍事利用以外でも、無人飛行船には成層圏プラットフォームとしての利用が期待されている(右図)。これは、成層圏にソーラーパネルで動く飛行船(もしくは飛行機)を滞在させることで、現在人工衛星が行っている、通信中継、気象観測、地質調査などを行わせるものだ。人工衛星よりも、かなり地表に近い位置にあるので、通信に遅延が少ないなどの特性があるし、回収が困難である衛星に比べて修理・点検が楽だという特性もある。

ところがJAXAも成層圏プラットフォームの開発・実験を行っていたが、2006年に当初目標を達成できずに終了してしまっている。そしてJAXAが2005年に出したJAXA2025/長期ビジョンからは、成層圏プラットフォームのことは、まるで無かったかのように消えているのだ。無人飛行船による成層圏プラットフォームが困難かつ地味な研究テーマであるのは想像がつく。月や火星に人を送り込む方が派手さに勝るし、研究意欲が増すのだろう。しかし、国策から考えると、宇宙開発よりは実利があるのが成層圏プラットフォームだ。IT Proで藤川氏が研究再開を主張していたが、少なくとも研究再開を検討する価値はあるであろう。

日本には米軍のように積極的に航空技術に投資してくれる組織が無いので、こういう、ちょっと先を行った可能性の高い技術を伸ばす政府投資が行われない事が多い。しかし、こうした技術は産業的に広がりが期待できる。厳しい財政事情の中では、なるべく有用な技術に投資を行うべきである。航空宇宙技術の研究開発費の削減を行うなら、無人飛行船よりは、超音速ジェット機の方を削減するべきであろう。

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