ケータイ電話の通信機能の進化にともない、利用パケット量も爆発的に増加してきた。昔は携帯用のウェブページの閲覧や、限られたサイズのEメールを送るのが精一杯だったのが、いまやアプリのダウンロードや動画の閲覧がごく普通にできるようになっている。従量制のパケット代は高額で、パケ死という言葉が生まれ、定額制の料金メニューが産まれて一般化してきた。
しかし、この定額制の料金メニューが携帯電話会社の悩みの種になっているようだ。つまり、一部の契約者の利用量が膨大で、通信会社のインフラの負担になっているらしい。
1. 定額プランの問題点
そもそも定額プランは、全員が定額で利用することを前提に作られていない。定額プランで契約しても、そうは利用しない人がほとんどだ。だから、全員が利用しないことを前提にインフラ等を設計し、廉価な値段で定額プランを提供している。しかし、人数にして1%程度のごく一部のユーザーが大量に通信を利用し続けているらしく、定額プランの前提が崩れつつあるらしい。
利用量が通信インフラの限界を超えると、他のユーザーが快適に通信ができなくなる。場合によっては圏外が増加するエリア・シュリンクや、輻輳が発生して通信自体ができなくなることもある。最近は価格競争の厳しい携帯電話会社にとっては頭の痛い問題である。
2. 欧米の携帯電話会社のヘビーユーザー対策
そこで、欧米の携帯電話会社では一部のヘビー・ユーザーの動きを制限する方法に出たようだ。米国でiPhoneの独占販売をしているAT&Tは定額プランを廃止し、月額$25で2GBまでで、これを超えると1GBあたり$10の追加料金が発生するData Proプランを提供しだした。英国でiPhoneを提供しているO2も定額プランを廃止し、£25で500MBまで使え、これを超えると500MBあたり£5で利用枠が増やせるプランを提供しだした。なお、AT&TもO2も基本料金と通話料は、上記プランとは別だ。つまりヘビーユーザーは、パケ死を恐れて利用を制限するという算段である。
3. 日本の携帯電話会社のヘビーユーザー対策
日本の携帯電話会社は、現在のところはヘビーユーザーの通信速度を制限する方向で対策をとっている。ITMedia の記事などによれば、以下の施策があるようだ。
- NTT DoCoMo
- 利用当日を含む直近3日間で、300万パケット以上の利用があった場合
- 混雑時の通信速度をほかのユーザーよりも抑える
- KDDI au
- 前々月、300万パケット以上の利用があった場合
- 21時から翌1時までEZwebの通信速度を制限
- Softbank Mobile
- 前々月、パケットし放題、パケットし放題S、パケット定額ライト、パケット定額で300万パケット以上(PCサイトブラウザ、PCサイトダイレクト利用時は1000万パケット以上)、パケット定額フルで1000万パケット以上の利用があった場合
- 当月1カ月間、パケット通信の速度を制限する
- E-Mobile
- 24時間ごとの通信量が300万パケット(366MB)を超えた場合
- 当日の21時~翌日2時にかけて帯域制限
実際の速度制限がどの程度なのかは非公開なのだが、噂では半減となっている。自分がヘビー・ユーザーだと気づいていない人は、何だか調子が悪いなぐらいにしか感じないであろう。ユーザーに自主的に利用量を制限するようになるのかは、やや疑問だ。
4. イーモバイルのADSLがセットのプランは合理的
なお、イーモバイルはPC接続も定額プランで提供している関係もあり、定点モバイラーと呼ばれる自宅でイーモバイルの回線を利用するユーザーには、割引でADSL回線を提供するようにしている。この定点モバイラー、住宅街に集中的に存在して、かつ特定時間帯に集中的に利用するので、ケータイ会社には悩みの種となっている存在だ。単に制裁的に帯域制限をしているだけではなく、総合的にトラヒックを分散するようにしているのは評価できるであろう。
5. 今後の展望
さてtwitterの愛用者であるソフトバンクのトップである孫正義氏は定額プランの存続について聞かれて、永続的にサービスを続けるかは明確に答えなかった。経営上のフリーハンドを確保する目的もあると思うが、現実的には限界が迫っているのかも知れない。あっという間にパケットを浪費するスマートフォンを使っているときに、定額プランが無ければ落ち着ついてサービスを利用できないと思うが、定額プランに逆風が吹き始めたのは確かのようだ。
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