アメリカの世論はロシアに厳しい。ロシアのウクライナ侵攻に関して、世論調査では有権者の52%がウクライナ側につくと答え一方、ロシアを支持した人は4%に過ぎなかった*1。また、70%が開戦責任はロシアだといっている*2。ところがトランプ大統領は親ロシア派だ。
トランプ大統領はロシアの戦争責任を認めず、国連の非難決議には反対している。概ねクリミア併合以降の対ロシア制裁の撤廃を主張しており、実際に2019年1月にはロシアの企業や個人への制裁を解除した*3。現在も制裁解除を模索していると報じられている*4。共和党の影響もあるのか2018年3月と8月に対ロシア制裁の強化も行っているが、積極的とは言えないものであった。
なぜトランプ大統領は親ロシア派なのか? — ロシア制裁が解除されれば、トランプ大統領はビジネス上の利益を得る可能性が高いことが、その理由であっても不思議は無い。
トランプ氏が1990年代に事業が暗礁に乗り、何度もの破産のあと銀行からの融資が途絶えた2004年に、ロシア人とカザフスタン人の投資会社Bayrockとのパートナーシップで生きながらえたことは良く知られている*5。同時期のリアリティ番組「アプレンティス」でトランプ人気が出た後は、ドイツ銀行とシグネチャー・バンクから融資を受けられるようになったようだし、もし関係が継続していても、ここ3年間の対露金融制裁でビジネス上の関係は途切れているが、トランプ帝国にとって重要な潜在的出資者である。
マネーロンダリングの片棒を担がされていたなど、ロシアに弱みを握られている可能性も取り沙汰されるが、有力な証拠となる情報はない。昔、助けてもらったので漠然とロシアに好感を持っている可能性もあるが、私の見立ててでは昔の恩に義理を果たすタイプでは無い。ウクライナに民主党のバイデン前副大統領(当時)の不利になる情報を出すようにゼレンスキー大統領に迫ったが拒絶されたので、ロシアの味方になったと言う話もあるが、その2019年7月の事件以前からの親ロシア派である。2016年6月に大統領選の最中、クリミア併合に対するロシア制裁の解除を検討すると言っているし、プーチン大統領をずっと賞賛し続けてきている。
*1米国民の52%、ウクライナを支持 46%はトランプ氏がロシア寄りとの見方 - CNN.co.jp
*2トランプ氏の生活費高騰対応、支持は3割=ロイター/イプソス調査 | ロイター
*3トランプ米政権、プーチン氏支持ロシア企業の制裁解除 - BBCニュース
*4米、ロシア制裁緩和の可能性検討 財務・国務省に作業要請=情報筋 | ロイター
*5How Russian Money Helped Save Trump’s Business – Foreign Policy
Bayrockの幹部の証言では、Bayrockはトランプ氏が新たな融資を得るのに必要な自己資本を、トランプと言う名前を冠するライセンス料として与え、また、ロシアや旧ソ連圏からの資金を紹介することで、不動産業界に復帰するのを支援したようだ。この頃に、トランプ氏は倒産ギリギリの不動産開発業から、トランプブランド貸しにビジネスを再構築した。
2016年のABC Newsのインタビューで、パームビーチの不動産を買い、高値でロシア人に売るビジネスを行っていたことを、トランプ氏も認めている。建造物の改修で不動産価値があがったと主張しているが、2008年にロシアの億万長者ドミトリー・リボロフレフに、4000万ドルで購入した6エーカーのパームビーチの不動産を、1億ドルで売却したときは、金融危機で不動産価格が急落していた時期だそうだ。
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