2023年12月10日日曜日

ヘイトスピーチだとレッテルを貼って、論敵の口を封じたがるトランス擁護派

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㈱KADOKAWAがアビゲイル・シュライアー氏の『あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇』を刊行中止にしたことで、㈱KADOKAWAおよび、発売中止を求めていたトランス擁護派に非難が集まっている。翻訳を完了し、装丁ができて、宣伝をはじめた後に出版できなくなるのは、誰かの圧力による干渉が予想され、そうであれば言論の自由の観点から由々しき問題だからだ。

㈱KADOKAWAに外部から圧力がかかったかは分からないが、トランス擁護派の人々はヘイトスピーチ本の流通規制は必要で*1、シュライアー本の刊行中止は適切な判断と主張している。本の内容と邦題がずいぶん違う、インタビューを中心とした内容で科学的ではないというような批判もあるが少数だ。ところがシュライアー本はどうもヘイトスピーチ本ではない。

シュライアー本への批判*2を読む限り、トランスジェンダーへの憎悪とその排斥を煽る話ではなく、特に女性の思春期において、トランスジェンダーである根拠となる性的違和が生得的にではなく社会的に生じており、性的違和を肯定したり二次性徴抑制剤で治療することに心理的な害があると主張する本だ。事実誤認があるとか、パターナリスティックな考え方だと言う批判はありえると思うが、これを読んだからと言ってトランスジェンダーに石を投げようとは思わない。

シュライアー本の主張の是非はさておき、ヘイトスピーチだという批判は適当ではなく、レッテル貼りで異論を排斥する行為になっている。著者ではなく内容を問題にしている排斥運動なので厳密にはキャンセルカルチャーではないのだが、フェミニスト哲学者のキャスリーン・ストック氏の憂き目を連想させる。性自認ではなく、生得的な性別に区分けを重視する言説*3が、憎悪に満ちていて耐え難いと非難されたため、ストック氏はサセックス大学から辞任を余儀なくされ*4、その後も講演に反対運動が起きるなどしている*5

ジェンダー学者のサラ・アーメッド氏は、トランスジェンダーを抹殺しようとしている人々に自由な発言を許さないことが、トランスジェンダーが生き延びるために必要だと主張する。しかし、アビゲイル・シュライアーは、トランスジェンダーを抹殺しようとしているのであろうか。現在の未成年者への性的違和への治療方針を批判することは、トランスジェンダーの抹殺につながると言えるのであろうか。シュライアー本の刊行中止を訴えたり喜んだりする前に、本の内容から検討しなければいけないことはあるのだが、ジェンダー学者を含むトランス擁護派の多くはこの作業をしていないように見える。読んだ上でレッテルを貼っているのかも知れないが、その場合は不誠実にリベラル的な人々を扇動していることになる。

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