電気なくして生活が成り立たなくなって久しいが、自分が電気について何を知っているかを考えると心もとない人が多いと思う。高校で物理を履修していない人は多いであろうし、高校物理の電磁気の話は紙面の都合か説明が不足していて、分かりづらいと言う評判もある。また、分業の御利益で電気についての知識が危うくとも、何とか生活はしていける。電化製品を同時に使いすぎてタップを過電流で焦がしたりしている人がいるが、そういう人でも大抵は無問題で生きていける。
そんな事でいいのかと言えば、そんな事で良いのではあるが、あるときある人に電場と磁場の見分けもつかないのは非常識過ぎると非難されたので、もう少し常識を固めたいと思っていたので、「ひとりで学べる電磁気学」を拝読してみた。電磁気ではなく電子工作の本を読んだ方が実用的な気もするが、電子工作本では説明が省略気味の事が詳しく書いてあるので補完関係にはある。
問題の本書は、著者はあとがきで自画自賛しているが、賛否が分かれる仕上がりである。検索すると、こだわりを感じると言う評と、難解で一人で学べないと言う評を見かける。簡単な微分方程式も避けて通る、数学に頼らない直観的な理解を目指している所謂教科書では無い科学読本なのだが、大学の講義のように数学をもっと使った方が分かりやすいかも知れない。ただし、数学を全面回避しているわけではない。微積分はもちろん、ガウスの発散定理が「数学メモ」での説明もなく参照されているし、最初にベクトル解析っぽい話が出てきてどうなるかと思った。項目は高校物理のものを概ね踏襲しており、研究史や量子論による説明が内容に加えられている。具体的な研究、特にファラデーの研究の紹介が具体的で細かい。昔の偉人の実験小噺が好きな人は、面白く感じるであろう。第7章でようやくフレミング右手の法則で、ここまで長く感じる。しかし、第8章でしっかり大学レベルと言うか、ファラデーの主張を数学的に整理したマックスウェルの方程式が説明される。まとめると、ファラデー偉大。
「電磁気の初心者向けの本ではない」と言う評があったが、検索すれば何とかはなると捉えるべきか、検索して説明を補足しないと分からない事が多いと捉えるべきかは、読者のポジティブ度に依存するであろう。ただ、大学の講義資料などにフリーライドしながら読み進めていかなければならないのはそうだと思う。普通の電磁気学の教科書のサイドテキストとして書かれているのでは無いであろうか。あとがきを見たら「本書を手がかりにして、インターネットで検索し、結果を整理するとよい」と書いてある。ひとりで学べるとは書いたが、この本だけで学べるとは言っていないと言うことのようだ。
0 コメント:
コメントを投稿