2013年10月4日金曜日

ジャンク債とは格付ダブルBの債券で敵対的買収技法ではありません

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金融業の人はかなり違和感を持つと思うが、経済評論家の池田信夫氏がマイケル・ミルケンが敵対的買収の技術としてジャンク債を開発したと主張している(BLOGOS)。池田信夫氏曰く、敵対的買収のために債券を発行して資金調達を行うと、買収失敗時に債券価値が無くなるので、ジャンク債と呼ばれるようになったそうだ。全般的に債券や企業買収に対する理解が足りないと言うか・・・妄想が書き並べてある。

1. ジャンク債は格付ダブルBの債券

ジャンク債は、将来の安全性に不確実性があるとされるダブルB以下の格付を持つ債券についた俗称だ。利回りは良いのだが、デフォルト・リスクが高い。破綻した山一証券などの債券の最後の方がそれになる。ただし投資不適格と言っても、2000年のITバブル崩壊後の光通信の社債など10%を超えるリターンなのに償還される例もあるし、複数のジャンク債を組み合わせると低リスク高収益のポートフォリオに化ける場合もある。上述のミルケンはこのようなジャンク債で儲ける方法を発見し、ジャンクボンドの帝王と呼ばれた。

2. 株式公開買付けは成功するまで資金が要らない

敵対的買収で社債を事前に発行するのかと言うと、実の所はしないと思われる。株式公開買付け(TOB)の場合では、TOBが成立しない場合は一株も買わなくて済むので、TOB成功後にしか資金は必要ない。通常は金融機関と融資予約であるコミットメントラインを結んでおいて、TOB成功時に資金調達を行う。そうでなくても買収失敗時には資金を使わないので、買収側の社債が紙屑になることはない。なお、敵対的買収で一般的かは分からないが、企業買収にはLBO以外の選択肢で株式交換と言う方法もあり、こちらは現金の必要性が無くなる。

3. 買収失敗して出る利益もある

買収を進め、中途半端な比率の株式を保有することになったとしても、買収対象の株式にも価値があるので、買収者の純資産はそうは悪化しない。つまり保有株式を売却すれば現金を入手できるわけで、買収者の資金繰りが悪くなるとは限らないのだ。むしろ買収失敗時に高値で株式を売却して撤退するケースもある。明星食品への買収失敗で、スティール・パートナーズは利益を出している。保有株式を高値で買い取らせて大きな利益をあげる事を目的とするグリーンメーラーと見なされる投資家もいるぐらいだ。

4. 用語ぐらいは検索しよう!

素朴に考えても、買い物をしないのにお金を失うことがあるのかと言う問題に帰着するので、どうして敵対的買収に失敗すると調達資金を全て失うと言う発想になるのかが分からない。映画と現実の区別がつかなくなってきたのかも知れないが、用語ぐらいは検索して確認してから妄想を書いてもらいたい。

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