2020年2月13日木曜日

はあちゅうさんにも、二重盲検のランダム化比較実験と治験について学んで欲しい

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以前、血液クレンジング(血液オゾン療法)を受けたと公にして炎上した人気ブロガーのはあちゅう氏*1が、凝りもせずに血液クレンジングが予防医療の観点では部分的効果が認められていると断言する医師がいたと言い出し、また炎上している。代替医療は医師免許を持つ者が勧めていても効果がないものが大半で、さらに安全性に問題のあるものがあると言う感覚が無いようだ*2。効果・効能の測り方を学んで、血液クレンジングについて再考してもらいたい。

1. 臨床実験で効果を確認しやすい効能を謳っている

治療や予防の効果の測り方には、決まりきった方法がある。二重盲検のランダム化比較実験(RCT)を十分な数の被験者で行い、統計的に有意に大きな効果量が重要な健康指標にある事が確認され、さらに追試が成功すればよい*3。ランダム化比較実験は、無作為に処置群(T群)と対照群(C群)を分けて、本物の治療と模擬の治療を実施する方法で、二重盲検とは、被験者及び被験者に接して治療を行う医療者の両方が、どの被験者が処置群なのか分からなくする方法だ。

この教科書的な臨床実験の方法は、しっかり実施できればバイアスが入りこまないと言う意味で理想的だ。他のランダム化されていない方法では、不健康な人ほど薬に頼って薬効が低く観測されたりするし、二重盲検でないと、偽薬効果で空元気が観測されたりする。

この教科書的な手順の実施が無理な場合もあるが、血液クレンジングの効能を見ると、肩こりや花粉症の症状、血流の改善など、被験者を集めやすく*4、かつ短期で結果を測定しやすいものが挙げられており*5、実施に問題は無い。

2. しかし臨床実験で効果が確認されているとは言えない

ところが血液クレンジングは、学術論文を探しても、無名雑誌に一報、微妙な改善効果が報告されているだけで、米国食品医薬品局(FDA)も否定的な報告をしていることが紹介されている*6。研究しやすいのに効果を主張する論文がほとんど無いということは、ホメオパシーと同じように効果が無い蓋然性が高い。不正研究騒動で分かるように、世の中、研究業績を上げたい人は多く、目立った効果がある治療法は、医療系の学術雑誌に山ほど効果が報告される。本当に効果があるのであれば、学術論文による報告がほとんど無いのはおかしい。

3. 他の治験をパスしている治療法を信じるべし

医療は人の命を左右するわけで、仲間内でヒソヒソ話すバカ話を、世界に向かって話だすとすぐに炎上してしまう*7。せめて効能を確認するための方法論ぐらいは覚えておこう。科学的な検証プロセスを覚え、英文の学術論文にアクセスし、その学術論文の弱点を探りつつ読解するなんて無理と思うかも知れないし、実際に日々鍛錬を続けていかないといけない。素人にはなかなか難しい。

しかし、安心して欲しい。厚生労働省が治験と言う制度で、分からない人のために治療法を代わりに検証してくれている。治験は研究デザインから形式化され審査されるので、一般の臨床試験より厳密に実施される。そんな厳しい治験をパスしていても効果が微妙な薬もあったりするのだが、治験もパスできない治療法に信頼がおけないことは変わらない。血液クレンジングはもちろん治験はパスしていない。つまり、炎上したくないのであれば、効果があるように言ってはいけない存在である。

ところで、消化器官を介さずに体内へ異物が混入するリスクを考えると、ホメオパシー以上に回避すべき代替医療だと思います。

*1「トンデモ医療であると、断言します」 血液クレンジング、医学的に徹底検証してみた

*2安全性に問題が無くとも、標準医療を回避してしまって病状を悪化させたり、偶発的な疾患で死亡したりするときがある。

*3誤認や捏造の可能性があり、複数の研究グループが追試に成功するまでは、そんなに強い信頼はおけない。

*4かかる人が少ない病気の治療薬の場合、十分な被験者を集められないことがある。そして十分な数の被験者がいないと、ランダム化は分散を大きくするので逆効果になる場合もある(関連記事:あなたが知らないランダム化比較実験にある落とし穴)。

*5人間を長期間拘束できないので、喫煙による肺がん罹患率上昇など長期効果を見る場合はランダム化比較実験ではなく、同一世代の健康状態を長期にわたって追いかける/遡るコホート分析を行うことになる。

*6血液クレンジング療法を笑えない日本医療の闇 現役内科医が明かす"衝撃の事実" | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

なお、欧米でも偽医療が流行って問題になったりするので、この記事の最後の方の主張と異なり、偽医療は日本特有の問題ではないと思われる(関連記事:ES細胞治療も、現在はオカルトで偽医療)。

*7関連記事:ネットで心が折れないための10の作文技法

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