2018年10月14日日曜日

社会運動家「みんな労組に加入して賃上げ要求しろ」「富裕層にはもっと課税しろ」

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社会運動家/聖学院大学人間福祉学部客員准教授の藤田孝典氏が、なぜか株式会社ZOZOの社長と従業員を狙い撃ちにして富裕層への課税強化と労働組合への加入と労使交渉を呼びかけ、批判を受けている*1

論点が見えづらいのだが、マルクス経済学用語とちょっと下衆なデモ隊ノリのスローガンに違和感があり、株式シェア3%以上保有する創業者などが受ける配当に対する課税は総合課税になるためZOZOの社長はかなりの実効税率で納税している*2ので、豪遊していることは非難には当たらないと言うところであろうか。

しかし、思いやりの原理に従って主張を読み解き、労働組合を組織して使用者に待遇改善を訴えよう、富裕層への課税強化をしようと言う主張に整理すれば、そう変な話ではない。

1. 日本の労働法は労働者側の代表を前提としている

非難されているが、労働者側から見て労組は組織した方が良いと言うのはそうであろう。教科書的なミクロ経済学でも雇用主に(買い手)独占力がある場合は、団体交渉をした方が雇用機会の喪失なしに労働者の待遇は良くなる。また、日本の労働法は労働者側の代表に実効力がある事を期待しているので、労組が無かったり、あっても形骸化していると、異常な36協定が結ばれて過労死などの一因になったりする。労組が左翼運動*3に熱中して従業員の利益になっていない気配はあるのだが、組織しないとしないで問題になりうることも、もっと知られるべきであろう。

2. 最適所得税理論は最高税率の引き上げを正当化

富裕層への課税強化も、そうハチャメチャな主張でもない。最近の最適所得税理論からすると概ね最高税率の引き上げが正当化される*4。重税だからと言って働くのをやめても、お金が無ければ他にすることは何も無いのだ。ただし、税率に対する課税所得の弾力性や準線形の効用関数などの与件に依存する面もあるし、相続税や法人税などの影響も考慮する必要がある。また、余談ではあるが、富裕層よりもボリュームゾーンの中間層への課税強化をしないと、財政改善にならないと言う指摘もあることには留意して欲しい。日本は欧米と比較すると、中間層の税負担が小さい事が知られている。

3. リバタリアンの論理は強いものでもない

リバタリアン的な人が富裕層への課税に反対している雰囲気があって、彼らは帰結主義的に同一税収を与件として社会厚生を最大化する税制を作り上げたとして、それが公正だとは思わない気がするが、その辺は魂と魂のぶつかりあいなので気合で説得するように頑張ってもらいたい。「税と正義*5を読み込むと、リバタリアン側の論の弱いところが分かってくると思う。長くて読むのが嫌になるかも知れないが。

4. 論の組み立て方には注意して欲しい

死んだ学問の用語を振り回されると面食らうし、下衆なデモ隊ノリのスローガンは炎上要素満載なので自粛して欲しい*6し、役員報酬や賃金水準は様々な事情があるので、安い高いは同業他社と比較しないと何とも言えない気がするので調査を深めてもらいたいが、藤田孝典氏が言いたいこと自体は分からなくも無い*7

*1藤田孝典「ZOZOTOWNの中の人は労組に加入して前澤友作の私的趣味・交遊よりも労働者に金を出せ」旨に対する反応 - Togetter

*2そのうちタックスヘイブンに逃げるのでは無いかと言う指摘があったが、事業が日本で行なわれている限りは個人も法人もビシバシ課税される(関連記事:タックスヘイブン対策税制はそこそこ機能している)。2006年に「ハリー・ポッター」シリーズの翻訳者である松岡佑子氏が、スイスに居住しているとして日本での申告を行わなかったところ、生活実態は日本にあるとして東京国税局に追徴課税されたケースが有名だ。相続・贈与の場合は一定期間国外で生活していると日本では非課税になり、消費者ローン大手の武富士の創業者の長男が香港に移住することで譲与税の課税を免れた例があるが、その後、相続や贈与が無税になるための条件は厳しくなった。

*3労組が反原発運動・反米軍基地運動をする必然性は無い。

*4國枝(2011)「新しい最適所得税理論と日本の所得税制・最低賃金

*5税制に一家言持ちたい左派は読んでおくべき「税と正義」

*6関連記事:ネットで心が折れないための10の作文技法

*7地方では高齢者が…の話はちょっと擁護するのが難しいように感じた。都市から農村への直接間接の所得移転は少なくなく、農村経済は自律しているわけではないし、生きづらいと言う理由でも都市へ人が流出している。

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