韓国では旭日旗は侵略者たる大日本帝国軍を象徴した旗で、そのために敗戦後は使用が禁止されていた*1と思い込む人々が増えているのか、近年、旭日旗を掲げることや、旭日旗に似た模様の利用を非難する動きが目だつようになってきた。
韓国政府はこの“歴史認識”に同調はして来なかったのだが、韓国海軍が世論から非難を受けないように配慮しはじめた。“国民情緒法”に負けつつあるようだ。
軍艦は国籍旗と軍艦旗を掲げることになっているのだが、ここ数年、韓国に入港する海上自衛隊の艦艇が旭日旗を掲げていることが問題視されるようになってきた。2016年に騒ぎになったときは、韓国海軍は国際法上、自衛隊の艦艇は日章旗と旭日旗を掲げる義務があり、また韓国に管轄権がない事を説明していた*2のだが、2018年9月11日の済州観艦式においては旭日旗を何とか降ろさせようと、韓国海軍は「国際観艦式の海上査閲参加15カ国の艦艇に自国旗と太極旗を使用してほしいとする公文書を送った」そうだ。国際法上の義務はどこかへ行き、しかも14カ国が巻き添えである。
ざっと検索する限り、2011年ぐらいから大きく問題にされるようになったのだが*3、敗戦による軍解体で一時使われない時期があったとは言え、自衛隊は1954年から旭日旗の利用を再開し、それから50年以上も経っているので、今更何を言い出すのやらと呆れた日本人は多いであろう。ドイツではハーケンクロイツなどナチスの象徴と考えられるものが人種差別を助長すると言う考えから民衆扇動罪で規制されているが、旭日旗がヘイトクライムの象徴になってきたわけでもない。お日様だけに旭日旗自体に政治的なメッセージは無い。帝国主義時代の日本で使われていた軍旗の象形とは言えるかも知れないが、植民地支配を行なってきた各国がそれを理由に国旗や軍旗を変えたとも聞かない*4。
困惑することしかりなのだが、韓国社会の特性を考える上では興味深い事例になっている。日本帝国主義の被害者として朝鮮民族を位置づけるために、史実やそれまでの経緯など無視して話が構築され、そして出来上がった“歴史認識”を支持する“国民情緒法”に政府が振り回されてしまう。従軍慰安婦問題や、対馬仏像盗難事件でもそのような傾向があるわけだが、旭日旗は最新の“歴史認識”となる。日本統治時代を知らない世代が成人の多数を占めるようになった90年代初頭から、民主化の効果もあってかこういう傾向が顕著になってきたように思えるのだが、日本帝国主義の被害者と言う自覚が、韓国人の持つエスニシティなのであろう。
ところで、4月に話題になったディオールのドレスは旭日旗と言うよりはオオベニゴウカンに近いように思えた。クリエイティブ・ディレクターのマリア・グラツィア・キウリ氏によると、扇がモチーフらしいが*5。
*1日章旗は1945年から1949年は連合国軍総司令部(GHQ/SCAP)の指令により利用が制限されていたのあが、旭日旗の取り扱いがどうなっていたかは確認できなかった。軍が解体されたので、公的に利用する場は無かったとは思うが。
*2日本の艦艇、旭日旗つけて韓国海軍基地に入港 | Joongang Ilbo | 中央日報
*3<アジア杯>韓日戦、「キム・ヨナ悪魔仮面」「旭日旗」に非難集中 | Joongang Ilbo | 中央日報
朝日新聞なぜOK?「韓国起源説」まで… 韓国「旭日旗追放運動」は首尾一貫していない
*4大手メディアも何か抜けており、朝鮮日報は「ファッションや文化界で旭日旗デザインが堂々と使用される理由は、旭日旗が戦犯旗ではなく日本を象徴するデザインだと思われているからだ」と考察しているが、戦犯旗と言う概念が韓国以外にない事を見落としている。
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