2014年5月2日金曜日

基本知識の説明から難問の紹介に辿りつく「数学ガール/フェルマーの最終定理」

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数学ガールの本編5冊のうち、「数学ガール/フェルマーの最終定理」を最後に手をとる事になった。難問の紹介と基本知識の説明を両立していて、小説部分もキャラクターの描写として広がりのあるものとなっており、シリーズ中、最もまとまっている作品に感じた。大学入学前に読んでおくと復習と予習と酒席*1の小ネタになって良さそうだ。

最後にフェルマーの最終定理を紹介するわけだが、初歩的な整数の性質から話が始まる。中高で習うような因数分解、背理法、虚数平面の話から、素数指数表現と言う見慣れない概念や、群・環・体の代数学で用いられる基本概念が説明された後に、無限降下法で四次のフェルマーの最終定理が証明される。その上で、天下り的に一般のフェルマーの最終定理の証明の概要が紹介される。第9章で説明されるオイラーの公式が全体から浮いた感じがしたのだが、第10章の代数的整数環につながっていたし、全体構成は良く練られている。中学生への説明で使われるテイラー展開が証明や説明なしで、そもそもネイピア数に定義にも触れられていないところが気になったが、全体としてみれば分量的にも難易度的にも妥当な構成であろう。復習と予習をしていたら、フェルマーの最終定理の紹介にたどり着いたと言う感じを受けた。

シリーズの中で、人間関係が最も良く描写されている。キャラクターの慕情はこの巻で整理できる。後の巻では、何のためだか学校を抜け出してゲーデルの不完全性定理の勉強をしたり、中高生なのに数学やアルゴリズムに関してプレゼンテーションをしたりと、状況に違和感を感じる部分が多かった。しかし、フェルマーの最終定理のオープンセミナーを聞いて理解不能に陥るものの、数学才媛のミルカがレクチャーしなおすと言う展開は自然だ。交通事故にあってから面会可能になるまでが短すぎる気がするので、小説部分のタイムテーブルを書いて辻褄をあわせているのか疑問には思うが、後の巻に多く見られるP.256の「律儀なジェスチャ娘。」のような冗長に思えるキャラクターへの形容もほとんど無く、もっとも違和感無く読み進められた。

もしアニメ化するならば、この「数学ガール/フェルマーの最終定理」を中心に据えるのが良さそうだ。「数学ガール」は学習姿勢に関する独白が冗長に感じたし、ポエムがおかしい。「数学ガール/ゲーデルの不完全性定理」は最後に大きな無理を感じた。「数学ガール/乱択アルゴリズム」はプログラマもしくはプログラマ志望者向きだし、「数学ガール/ガロア理論」は人物描写に難がある。今のところ「数学ガール」シリーズ本編最高傑作は、本書を置いて他に無いと思う。

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*1大学新入生の皆様、お酒は20歳を過ぎてからでお願いします。

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