2014年4月21日月曜日

貸金業法改正の是非を議論する前に読むべき論文

このエントリーをはてなブックマークに追加
Clip to Evernote
Pocket

自民党が貸金業の金利規制緩和を検討している(日経)ことから、2006年12月の貸金業法改正で行われた、消費者金融のグレーゾーン金利廃止と貸付額を借手の年収の三分の一までに制限する総量規制の効果について、例えば金利上限を定めることで、闇金の利用者が増えたのか、そうでもないのかといった論点で、SNSで色々と議論が飛び交っている。しかし、資料の裏づけが無いので情報不足な感じが否めない。せめて早稲田大学の消費者金融サービス研究所がワーキング・ペーパー*1を公開しているので、それに目を通してから色々と考える方が建設的だ。

消費者金融の会社から、消費者金融サービス研究所に寄付が行われていると言う批判もある*2のだが、調査結果は別にイカサマと言うわけでは無いようだ。例えば「ヤミ金融の被害についての簡潔な報告」の図表20(P.29)あたりを見ると規制強化が節制を促している*3ので、消費者金融には有り難くない調査になっている。図表26(P.37)を見ると、消費者金融から断られた人が節制するばかりではなく、預貯金を引き出すケースがある事も分かり、消費者金融利用者にある種の不合理がある可能性を示唆している。また、シングルマザーのインタビュー(P.41)を見ると、ヤミ金融の代わりに利用すべきなのは消費者金融ではなく生活保護のように思える*4。ヤミ金融が拡大したと主張するデータ解釈に少なからず疑義がある*5わけだが、拾っている数字は参考になる*6

前文と結論だけ目を通して論文を理解したフリをする経済評論家もいるわけだが、そういう姿勢を取る必要は無く、結論に同意できなくても中身に注目したって良いはずだ。他に有力な調査結果が公表されているのであればそちらを見ればいいとおもうが、手に入る資料をスポンサー関係だけで捨ててしまうのは、ちょっともったいないように思える。

*1コメントなどをもらうために研究の途中経過を公開する論文。

*2早稲田大、サラ金業界と癒着 寄付5千万円で“御用論文”量産』では業界のカネで業界のための論文を量産と批判している。

*32009年、2011年の調査ともに、総量規制で借入ができなくなった人の多くは支出を抑制し、収入増の努力を行ったと回答している。ヤミ金融など違法手段に手を出した人よりも、圧倒的に数が多い。なお、2011年の方がヤミ金融利用者の比率が多く、論文では時間の経過とともに徐々にヤミ金融へ流れると結論しているが、母数の消費者金融利用者数が激減しているので、約60人が約63人になっただけで、実数でのヤミ金融利用者にそう大きな変化は無い。多重債務者が消費者金融から足を洗う事の困難さを表しているに過ぎないであろう。

*4「医療費のような緊急時」にヤミ金融を利用しているとあるのだが、生活保護を受ければ医療費は無料である。市役所に追い返されたのかも知れないが、それは消費者金融の問題とは別の議論が必要に思える。

*5例えば図表6(P.10)から「漸増するヤミ金融利用者」と結論しているが、2008年から2011年の推移を見ているのにリーマン・ショックや東日本大震災の影響は考察していない。

*6インターネット調査会社の提供するパネル調査を用いたとある(P.6)ので、アンケートに答えると少額が貰えるサービスに登録している人にバイアスがかかっているように思える。

0 コメント:

コメントを投稿