2013年9月8日日曜日

池田信夫はマルクス経済学の信奉者

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同じエントリーを三回連続で批評するのは気が滅入るのだが、『「マルクス経済学」は忘れたほうがいい』と言う経済評論家の池田信夫氏が、マルクス経済学の議論を踏襲した文章を書いていたので指摘したい。

学生時代にマルクスに心酔していたような事を言っていたが、まだまだ考え方がそれから抜けないようだ。

このような交渉問題をなくして命令系統を明確にするために、資本家が物的資本の所有権を通じて間接的に労働者を支配する制度が資本主義である。

雇用契約では、資本家の所有しているのは物的資本であって人的資本ではないが、労働者は物的資本にアクセスできないと仕事を失うので、資本家の命令を聞かざるをえない。

一般の経済学ではこのような議論は行わない。資本家も労働者がいないと資本から利益を生み出せないから、労働者の言い分を聞かざるをえないとも言えるからだ。物的資本の所有者が一つであれば独占力を行使できるが、実際の労働市場に雇用主は多く存在する。

歴史的にもおかしい。この議論では安い賃金で働くことを命令できるため、労働者は死なない程度の賃金しかもらえないが、19世紀の英国でも実質賃金は改善しておりそうでは無かった(米山(2003)図表4)。

一般の経済学でも会社側の方が個別の労働者に対して交渉力が強くなるとか、特定会社の業務スキルを身に付けると転職コストが大きくなるため会社側の交渉力が強くなると言う話はあるのだが、そういう議論にはなっていない。

ただし池田信夫氏は日本型雇用を『「資本主義の否定」という意味でメンバーシップと呼んだ』とも言っているので、物的資本が支配力を生むと言う理屈はあっさり否定してしまっている。欧米型の雇用契約において、物的資本が支配力をもたらしているとも議論していない。資本主義では物的資本が支配力を生むが、世界に資本主義は無いと言う事であろうか。ともかく全体の議論につながっていない。

なお、池田信夫氏は「通常の民事契約では両者は対等なので、労働者は資本家の命令を拒否できる」と言うのだが、業務命令違反は解雇理由になる。四回連続でつっ込む気にはなれなかったので、最後に書いておいた。

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