2012年11月4日日曜日

水の商品先物市場は民衆の敵?

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Natureで化学者のFrederick Kaufman氏が、穀物市場の例を上げつつ、水の先物市場は問題を多く発生させると主張している。しかし、過剰な心配性に思える。輸送費の面から水の商品先物市場は成立しないであろう*1し、近年の商品相場の上昇はインドや中国などの新興国の実需が背景にあるので、先物相場が悪いとは言えない。

あえて言えば、民間水道局が幾つも競争している状況で、水道局間で先物取引する事はあるのかも知れない。しかしながら、水道は限界コストが安く設備投資が大きいので、公営企業か独占企業でないと事業が開始されない*2。すると多くの民間水道局が産まれないので、取引は始まらないであろう。英国で水道局を民営化したときの事例では、独占による弊害(水道料金の高騰と水質の悪化)が発生する一方で、水取引の市場は技術的に実現しなかったそうだ*3

水道局を民営化するか否かの議論であれば理解できるのだが、水の商品先物市場の是非は藁人形論法でしか無いように思える。商品先物が価格形成をおかしくすると言う主張も、価格が上がった事を理由にされても、先物市場が要因とは言えない。ボトル・ウォーターは輸出入されているわけだが、エビアンに高いお金を払うのは、商品先物市場が理由とは無いであろう。

*1穀物は毎年一定量の取引があり、貯蔵や輸送が容易だから商品市場向きであるが、痛み易く輸送が困難なキャベツやレタスの商品市場は発達していない。水は貯蔵は容易であろうが、輸送は困難だ。

*2固定費用が大きく限界費用が逓減する産業では、競争均衡は損益分岐点を超えない。つまり独占・寡占企業でもない限りは、生産を行わない。

*3深澤「イギリスの水管理組織の変遷から水法と管理組織について考察する

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