2010年11月11日木曜日

尖閣ビデオ流出事件に関して、菅内閣へ伝えたいこと

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早々にビデオ流出犯が特定された。第5管区海上保安本部の巡視艇「うらなみ」搭乗の保安官が告白したそうだ。しかし、ビデオ流出犯を罪に問うことは重要な問題ではない。

そもそもの問題は菅政権が中国政府への配慮で、沖縄地検に起訴を断念させた疑惑があることだ。地検は否定したが、野党を含めた国民の大半は納得していない。世論調査では84.5%の人間が、政府関与があったと考えている(産経ニュース)。

1. ビデオは機密情報ではない

国家公務員法違反(守秘義務違反)で逮捕されたが、ビデオは機密情報なのかは疑念が残っている。中央大学法学部長・橋本基弘教授は「ビデオの内容についてはみんなが知っているわけで、誰も知らない情報だとは言えない」と指摘している(TBS)。

仙谷官房長官は「追跡方法、証拠を集める資機材の種類などが分かる。秘匿を要する情報だ」(産経ニュース)としているが、政治学者の青山繁晴氏は「ではなんで海保の装備も手の内もさらけ出してる2001年北朝鮮の工作船の動画は公表しているのですか?」と指摘しており、説得力に欠いている。

2. ビデオを公開するべき理由はある

国民は、公開する必要性はあっても、隠蔽する必要性は無いと考えている。11月1日の時点の世論調査でも、78.4%が同ビデオの公開が必要だと回答している(産経ニュース)。

ビデオ公開が必要な理由は、沖縄地検の処分保留判断が不当であることを確認するためで、菅政権が沖縄地検へ圧力をかけた可能性を検証していくためだ。公益上の必要がある場合は裁判証拠であっても公開できることになっており、実際にロッキード事件では公開されたことがある。

3. ビデオが非公開である理由を、菅政権は説明していない

今まで政府が行ってきた説明は、既に説得力がなくなっている。「係争中の事件に関する証拠品は公開できない」「日中関係に配慮した」としてきたが、既に処分保留で中国人船長は国外退去しており、ビデオ流出事件でも中国政府の対応は落ち着いていた。機密を維持する必要性が無い。

つまり、ビデオが非公開である理由を、菅政権は十分に説明しておらず、世論は非公開に納得していない。みんなの党の渡辺喜美代表は「そもそも国民に全面公開すべきもので、国家機密として罪の制裁をかけて守るべき情報ではない」と述べている(産経ニュース)。

4. 世論はビデオ公開を内部告発と歓迎している

仙谷官房長官は「擁護の声?国民の過半数がそう思ってると思わない。『しかるべき処分を』が圧倒的多数の国民の声」(BloomBerg)と言っているが、安倍晋三元首相、石原慎太郎都知事、屋毅衆院議員、佐々淳行元内閣安全保障室長は、内部告発として評価するコメントを残しているし、インターネット上の世論調査でも8割が許される行為だとしている(ZAKZAK)。

5. 民主党の動転で、ビデオに民主党が隠したい事実が映っていたことが分かる

民主党議員の動揺は隠せなかった。鳩山前首相は「政府にいる人間が政権批判を行う情報クーデターとすれば、政権にとって大変厳しい話だ」、原口一博前総務相は「役所がやったとすれば、国家に対する反逆に近い」と発言している。しかし、国家転覆につながる情報は動画には撮影されていない。つまり、流出すると民主党政権が困る情報が撮影されていたと言える。

6. 国民は内部統制よりも、検察への政府圧力が問題だと考えている

政権が困る情報とは何か? ─ 海上保安庁が悪質な中国漁船を取り締まった目に見える事実だ。ビデオを見る限り、那覇地検が処分保留にした合理的理由を見出すことはできない。中国人船長を処分保留とした那覇地検の鈴木亨次席検事は「我が国国民への影響や、今後の日中関係を考慮した。」と説明したが、この二つが処分保留の主な理由である事が確認された。

日中関係という外交問題を那覇地検が考えるのは、越権行為だ。当初は前原大臣でさえ起訴を示唆していたのに、地検の独断で処分保留判断をできるものだろうか。今や、世論調査では84.5%の人間が、政治的圧力で処分保留が決まったと考えている。そして、政権が暗黙のうちに検察を動かしていたとすれば、検察の独立性を侵害した国家犯罪となる。

7. 内部告発の弾圧は、民主制度を破綻させる

国家権力は暴走しうるものだし、それを止めるための内部告発の抑圧は問題だ。かつて米国で、ベトナム戦争を評価した内部資料のペンタゴン文書が漏洩したことがあったが、ベトナム戦争の停戦につながったと評価する声もある(asahi.com)。民主的な国家では、政府批判のための内部資料の流出は、発生すべき事件だと考えられている。

ビデオ流出者の海保職員の起訴や海上保安庁長官らの処分が検討されているが、起訴資料で内規的に問題があるとしても、当該ビデオの漏洩は利敵行為でも、誰かの権利を侵害したわけでもない。仙谷官房長官は「大阪地検特捜部の事件に匹敵する由々しい事案だ」(BloomBerg)と息巻いているが、流出ビデオ事件では被害と被害者が存在しない。

海上保安庁長官を処分するほどの機密情報なのかは疑いがもたれるが、この情報漏洩でどのような問題が発生するのかは、管政権からは説明されていない

8. 情報統制で国民をコントロールするのではなく、国会の証人喚問で那覇地検に説明させるべき

菅内閣が、ビデオ公開で世論が政権批判に向うことを恐れているのは明確だ。仙谷官房長官は「依然としてわが国の国民感情には改善の余地がある」(産経ニュース)と言っている。聡明な仙谷氏が、衆愚を先導すべきだと言いたいのであろうか。

しかし、民主国家では情報統制による国民のコントロールは許されない。少なくとも那覇地検の鈴木亨次席検事を、国会で証人喚問し、処分保留で釈放に至った経緯を説明させる必要があるだろう。もし本当に政権が関与していないしても、国会の場で那覇地検が説明を行わないと納得できない状況になっている。

9. 同様の事件が発生したら、菅内閣はどう対処するのか?

日本国民が一番知りたい事は、尖閣沖中国漁船衝突問題と同様の事件が発生したら、菅内閣はどう対処するのか、そのためにどんな準備を行うかである。

中国共産党機関紙人民日報系の環球時報を通じて商務部所属の唐淳風氏が『沖縄の主権帰属は未確定で、中国政府が解放・占領すべき』だと主張している。何かの悪い冗談にしか見えないが、中国政府はチベットを開放したと主張している。また、インドがアクサイチンで、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイが南支那海で、中国と領土問題で紛争を抱えている。

「20年前ならいざ知らず、(中国は)司法権の独立、政治・行政と司法の関係が近代化され、随分変わってきていると認識していたが、あまりお変わりになっていなかった」(産経ニュース)と、仙谷官房長官自身が述べている。宮沢喜一元総理が中国を「私たちとは違う」と評したが、友好的な話し合いで物事が解決する相手ではない。今後、菅政権は、同様の事件が起きたらどのように対処していくつもりなのだろうか。

10. 何も説明しないで理解は得られない

菅直人首相は、「歴史に堪える対応を現在もしている」と強調している(時事ドットコム)が、ビデオ非公開の理由も、那覇地検が外交的判断をした経緯も、今後同種の事件が起きたときの対応も説明していない。

何も説明しないで理解は得られない。かつて自己の政策を詳しく説明しない政治家はいたが、それは政権外に論客が解説をしていた。今、菅政権の外交政策をサポートしている人間はいないのだ。

まさかAPECを「成功」させるために、裏から司法の独立性を犠牲にしたとは思わないが、表面的な友好は後日の失敗につながることは歴史が示している。ネヴィル・チェンバレン英首相とエドアール・ダラディエ仏首相はナチス・ドイツの領土拡張政策に対して、宥和政策で理解を示し破綻した。内閣支持率が32.7%と急落したのは、日和見主義で説明責任を果たさない内閣に対する、強い批判をあらわしているのを認識するべきだ。

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