2010年6月14日月曜日

「はやぶさ」とインターネット

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JAXAの小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトが、いよいよ最終局面を迎えたので、日本中が沸いていると言えるであろう。

科学技術という面では、間違いなくすばらしいプロジェクトだ。小惑星に着陸・接触を試みた初のプロジェクトであるだけではなく、イオンエンジンでの近日点を越える長距離探査の実証実験となっている。サンプルの回収ができれば万全だが、既に宇宙開発史に残る業績と言えるであろう。2006年に米国National Space SocietyのSpace Pioneer Awardを受賞しており、世界的にも認められている。

ただ、その内容に地味さが無い分けではない。月や火星に人を送るような夢のあるプロジェクトではなく、あくまで探査機を小惑星に送り込んだだけだからだ。こんなにも知名度が上がったのは、ニコニコ動画にアップロードされた、以下の動画によるものが多いであろう。

実証実験だけにトラブル続きの「はやぶさ」が、いかにプロジェクトを継続していったかをコミカルに描いた作品だが、関係者の苦労が良くわかるモノとなっている。国税を投入しているJAXAの失敗は、批判的に捕らえられる事が多いが、関係者も努力を見ていると親近感が沸くものだ。今後の予算獲得においても、国民の理解を得やすくなったと言えるであろう。

つまり、こういう公的研究は、いかに成果や意義を広報するかも課題になっている。しかし、必ずしも広報活動がうまく行っているわけではない。JAXAも広報スペースが無駄だと言う事で、そこは仕分けの対象になってしまっている。従来は、博物館やパンフレットにお金をかけて後方活動をすることが多かったわけだが、「はやぶさ」に起きた現象を見ていると、インターネットに積極的に情報を公開して、熱心なファンがそれを再利用して周囲に啓蒙してくれるのを期待するほうが、はるかに効率が良いことがわかる。インターネットの利用は最近の流れなので、JAXAも色々と動画をアップロードしているが、もっと生の素材を提供したほうが良いと思われる。ニコニコ動画にもっと面白くした動画を誰かがアップロードするだろうし、そちらの方がインターネットでの伝播は良いようなのだ。

実際、youtubeにはJAXAがまだ提供していない「はやぶさ」が燃え尽きる様子の動画がアップロードされている。

「はやぶさ」は儚く燃え尽きたが、プロジェクトの過程で観察された社会現象は、残された成果においても小さく無いものだ。JAXAがそれをうまく捕らえていけるかは、今後の宇宙開発の予算獲得において重要なポイントになって行くと考えられる。

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