ネット界隈で貧困問題が熱く語る人は多いのだが、実は良く分かっていない事も多い。低収入なのは確かなのだが、一般に何に幾ら支出していて、どういう遣り繰りをしているのか、分かる統計は意外にないものだ。国際援助を受けている開発途上国でも同様のところがあるのだが、貧困層に出納帳をつけてもらって*1その実態を明らかにした人々がいる。PORTFOLIOS OF THE POOR(邦訳:最底辺のポートフォリオ)は、その成果をまとめたもので、足場のしっかりした議論が展開されている。日本でもテレビ番組で妙な事例を紹介する前に同様の取り組みを行なえば良いと思うのだが、それはさておき、内容を簡単に紹介してみたい。
2016年10月31日月曜日
2016年10月26日水曜日
0.99999…=1の説明で中学生を煙に巻く方法
「0.999999... = 1 が理解できない中学生」と言う秀逸な小噺に、はてなブックマークで多くのコメントが残っていた。元ネタは教師が無限小数における四則演算を説明しなかったのでおかしい事になっているだけなのだが、ネット界隈の数学知識が不安になるものもちらほらある*1。また、中学生にキッチリ説明するのは大変だと言う趣旨のエントリー*2を書いている人もいるのだが、極限を使って説明してしまえば、そうでもないかも知れない。
2016年10月22日土曜日
MITの自称サムライ兄さんによるブーメラン工作及びその物理解説
2016年10月19日水曜日
駅乃みちかの萌え絵のスカートの描写について
公共交通機関に相応しくない絵だと批判を受けて、スカート部分の訂正に追い込まれた「鉄道むすめ」コラボのための東京メトロの駅乃みちかの萌え絵バージョンだが、ネット界隈で規範的な議論が盛んに行なわれている。問題だと思っている人は、(1)表情と姿勢が扇情的であり、(2)スカートの描写が不自然だと主張しており、(a)自然に起こりうる陰影であり性的な意味を見出すのは考えすぎ、(b)社会的に許容範囲内と言う反論がされている*1。そして、東京メトロはスカートの描写を修正するに至った*2。さて、扇情的なポスターが街に溢れているとして、趣味にあわない以上の実害なんて無いだろうと思っている私なのだが、実際にスカートがこのようになるのかは気になって仕方が無いので検討してみた。
2016年10月18日火曜日
SYNC: なぜ自然はシンクロしたがるのか
物理などの自然法則は微分方程式でモデル化されて来たが、非線形になると数学的に解くのは困難になる。しかし、ここ何十年かの間、定期的に非線形系が流行る傾向はあって、1970年代にはカタストロフィー理論、1980年代にはカオス理論、1990年代には複雑系理論が流行ったので、名前ぐらいは知っている人は少なく無いであろう。もっとも、名前だけ知っているが、中身はカケラも知らない人は多いと思うが。そんな人々のための本があったので読んでみた。
2016年10月17日月曜日
同化と他者化 ─ 戦後沖縄の本土就職者たち
沖縄を語る上で、沖縄戦の伝承と米軍基地の縮小を求めて来た歴史を背景にした沖縄県民意識ではなく、琉球民族としての意識に依拠した議論をする人は現実が見えていないと思うのだが、国連の先住民会議に糸数慶子参院議員が出席したりもしており、日本人と異なる琉球民族の存在を主張する人々も一定数は存在する。世論調査などの集計された視点だけではなく、沖縄県民がどういう風に考えているのかは、多面的に考えていく必要があるであろう。そのために丁度良さそうな本が出ていたので、中身をチェックしてみた。
2016年10月14日金曜日
助かるはずなのにホメオパシーで死んだ乳児はいる
人気ブロガーだったイケダハヤト氏がホメオパシーが効くと言い出しネット界隈で非難されて、「ネット民はホメオパシーに親でも殺されたの?」と言い出した。何となく炎上マーケティングな気もするのだが、ホメオパシーに子どもを殺されたと思っている人がいることは、良く認識した方が良いと思う。もう忘れたのだと思うが、山口新生児ビタミンK欠乏性出血症死亡事故のことだ。助産師が引き起こした事故であるため、日本学術会議の金澤一郎東大名誉教授が声明でホメオパシーを非難するに至った。
日銀の政策転換でリフレ派が敗北したと言われる理由
リフレ派の大半は不満のようだが、リフレーション政策が機能しない事は、日銀審議委員の間でコンセンサスを得つつある。インフレ目標値の達成を目指してきた日銀が、目標未達にも関わらず、9月20日の日銀金融政策決定会合で、さらなる量的拡大を諦めた事はその現れであろう。これに関してリフレ派から量的緩和だけがリフレーション政策ではないと言う主張もあるのだが、その主張には無理があるので指摘したい。リフレ派の学者もネット界隈の支持者も、ひたすら量的緩和を主張してきていた。
2016年10月13日木曜日
冤罪発覚による補償に備えるためには、死刑の適用範囲を狭めるだけでよい
日弁連が死刑廃止を目指す宣言を採択したことから、死刑制度の是非に関するツイートが増えたようだ。倫理学者の児玉聡氏も「死刑を廃止すべきか」で、倫理学的な考察ポイントを整理している。これらの議論を読んでいると、死刑廃止論の有力な根拠として、死刑執行後に冤罪が発覚しても本人には何も補償できない事が念頭に置かれているのだが、刑事訴訟で再審請求の可能性が無い事件がありうることが見落とされている。冤罪の可能性がゼロの事件がある限り、死刑制度の廃止まで求める必要は無いはずなのだが、そこは疑問に思われないようだ。
2016年10月11日火曜日
ノーベル経済学賞受賞者が考えた完備契約が全員を不幸にする事例
アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞に、オリバー・ハートとベント・ホルムストロムが選ばれた。ネット界隈では有名ではないらしいが、今までの受賞者のほとんどと同じように、経済学で学ぶものであれば誰しもが何度も名前を目にしてきた大物である。
さて、契約理論への貢献と言う受賞理由から、契約理論が何であるか日本語資料が読みたいと言う人は多いと思うが、既に立派な紹介論文*1があるので言うことが無い。そこで、彼らがある種の市場原理主義の批判者であることが分かる簡単な例があるので、ちょっと改変して紹介してみたいと思う。グラスゴー大学の林氏が良く言及しているHart(1975)のSection 6のExample 4である。