2026年7月27日月曜日

国民民主党のエロ広告規制法案は実効性が乏しい

昨年の基礎控除引き上げ案のあたりから、子持ちの中間層世帯あたりの支持を狙って政策を出している国民民主党が、インターネットの大手プラットフォーマーを対象に(暴力や薬物などの広告も含まれる)「エロ広告規制法案」を国会に提出してきた*1が、実効能力に乏しいので指摘したい。会期終了で廃案になったわけだが、次で再提出される可能性もある。

今回のエロ広告規制法案で、何か実態が変化することはない。

  1. 大手プラットフォーマーは既に年齢制限をしているし、閲覧者の年齢層を定めて広告を配信するようになっている。広告に文句をつける方法も提供されている。それでもエロ広告が目に入るのは、①広告主が年齢設定を誤ったか、②エロ広告OKの(遵法意識が低く国外から配信の)いかがわしいサイトを見ているか、③大手プラットフォーマーに混乱が生じた*2からか、④有害とまで言えないからだ。
  2. (④の話と関連するが)青少年有害情報の規制が、「エロ広告」規制になるのかが疑わしい。露出度が高いアニメ絵の広告が氾濫しているわけだが、原則としてセクシー水着程度の描写に抑えている。性行為を連想させるが性行為ではない描写や、ボディフィットなコスチュームの架空のキャラクターがぷるぷる動いていても、有害認定にはならない。

エロ広告とされるものを無くすには、有害認定の範囲を広げ、国外事業者を規制する手段を考えないといけないが、この法案はそれらを可能にするものではない。

そもそもエロ広告規制に意味があるのかと言う問題もある。創作物の影響を調べる心理学実験や計量分析は多々あるが、男子の人格形成に負の影響をもたらすとは言い難い。エロ広告よりも、ずっと悪影響がありそうなポルノですらそうだ。インターネットの影響もあり、近年はポルノが氾濫する一方、日本のみならず先進各国の性犯罪率は大きく減少している*3ポルノから道徳を学ぶ男子はたぶんいない。教育や報道の影響の方が圧倒的に大きい

女子がエロ広告を含むセクシー化された女性表現に悪影響を受けている説は、ぼちぼち傍証がある*4。セクシーな格好で男を釣って楽して生きるのが女の道と言う考えになってしまう説。しかし、これは化粧品やアパレルの広告、その他の創作物からの影響も含めてなので、エロ広告だけ規制しても、女子の人格形成への悪影響はほとんどなくならない。表現物への規制ではなく、教育によって価値観を矯正する必要が指摘されている。

*1【法案提出】議員立法「エロ広告規制法案」を提出 | 新・国民民主党 - つくろう、新しい答え。

*2イーロン・マスク氏に𝕏/Twitterが買収された後、アダルトビデオを宣伝するヌード広告が多数流れていたが、現在は収まっている。

*3因果を示すものではないが、ポルノの大きな害悪はほぼ否定される(関連記事:ポルノ視聴の性暴力への影響研究をメタアナリシスすると)。なお、悪影響の有無自体であれば、ノルウェーでは増やしているとする計量分析もある(関連記事:ノルウェーではポルノ視聴が性犯罪を増やした論文の問題点)、ドイツでは確認されていない(関連記事:ドイツのブロードバンド普及は児童ポルノの不法所持を増やしたが、小児性犯罪は減らした論文)。ポルノ全面禁止から実質解禁になる劇的変化の中で観察される程度の悪影響はあるが、マクロ的には微々たる効果量というのが現在のところ先行研究から分かることだ。

*4関連記事:エロ可愛い格好は女性に有害エロ可愛い格好をしている女の子は、頭が悪くなっている

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