タイツ製造業のアツギがTwitterを媒介に、タイツの女の子の絵をタイツ絵で有名なイラストレーター等の絵師に描いてもらうラブタイツと言うイベントを開始したのだが、投稿された一部のイラストのツイートに性的な描写を連想させるような不適切な表現があったと、早々に謝罪中止をすることになった。
過激な絵があったわけではない。「ラブタイツキャンペーンに関するお詫びとご報告」から類推するに、具体的に問題になった絵は以下の2つだ。女の子がスカートを少し捲し上げて、タイツを見てもいいと言っている情景が描かれている。
さて、この絵の何が問題なのであろうか。女の子の脚部に興味関心を示す(か示しそうな)人物に向かって、女の子が特別な行為をしているわけで、特別な関係の男女がそこにいる事が想像できる。しかし、ハードコア・ポルノのような過激な描写にはなっておらず、性的興奮を得るためのポルノグラフィとは言い難い露出度や描写なので、性的消費に用いられるような絵とは言い難い。ましてや、描かれた女の子は架空のキャラクターと言うモノなので、人格をモノとして扱うモノ化による不正は生じないから、性的モノ化だから問題とも言えない。そもそも、タイツの広告やパッケージは実在女性の一部分を切り取ったモノ化の典型例になるものが多いが、今まで問題となったことはなかった。性的パートナーであるかそうなりそうだと想像される男女を描いたら不正と言ったら、夫婦の描写すらできなくなる。男性向けコンテンツを女性向け商品の広告で使ったのが問題と言う指摘もあったが、一定年齢以下の女性はこの手の絵柄に親しみがあると言う話もある。ネット界隈で既に指摘されている理由は説得的ではない無い。
相手にとって喜ばしいと事だと自覚しながら、タイツのスカートで隠れていた部分をわざわざ見せる女の子が描かれているわけだが、キャンペーンの主旨からするとタイツとその着用者が女性に魅力的に見える絵と言うことなので、エロ可愛い小悪魔系女子が女性の規範的振る舞いであるとこの絵は主張していると解釈できなくもない。少なくとも、性的自己モノ化を肯定的に描いている性化(sexualization)された絵だ。ここまで自分の魅力に自覚的に振舞える女子はユニコーンのような幻想種な気がするが、男に媚びた振る舞いや生き方を嫌っている女性から見ると、不愉快な絵となる。さらに、描かれた女の子ほど可愛くないし、そのようには振舞えない自分はダメだと、絵を見た女性が自暴自棄になって道を誤ると言う説もある*1*2。
他の萌え絵は気にならないがラブタイツは気になったと言う人もいるし、文句をつけている女性全員の気持ちを代弁できているかは定かではないが、過去に問題になった広告や絵でも大抵、エロ可愛い格好の女性がポジティブに描かれている。同じように問題になった、2015年のルミネの“女性応援”CMでも、主人公ヨシノさんは見栄えのよい女性と比較されて焦っていた。3月に問題とされた、駅案内サイネージに使われている「AIさくらさん」がセクハラ質問をさらりとかわす事が問題とされた*3。美貌や仕草で上手に男を惹きつけつつ上手に男をあしらう女性の姿が非難されている。逆に、an・anのSEX特集は露骨にエロティズムを感じさせる表紙ではあったが、男に媚びるエロ可愛い格好の女性はいないので、ツイフェミには問題にされていない*4。同じ露出度でも性的魅力が感じられない絵柄だと、男に媚びる生き方に不可能感が出るので無問題になる。香港・西九龍中心で林祥焜氏の水着イラスト看板が非難されていた(Twitter)が、ギャグ漫画家の甘小文氏の絵に差し替えられたところ非難が止んだ(Twitter)。
*1関連記事:エロ可愛い格好は女性に有害
*2ツイフェミがお気に召さないからと言うだけで社会悪とはいえない。有害ではなく、女性が利用すべき能力だと言う主張もある(キャサリン・ハキム『エロティック・キャピタル』)。フェミニストでも、ラディカルな人々は否定的に、リベラルな人々は肯定的に捉えることが予想される。
0 コメント:
コメントを投稿