サブプライム・ローン問題に該当する事象を挙げて欲しい。
G7伊勢志摩サミットで安倍総理が配った、現状がリーマンショック前に似ているとする怪文書が話題になっている。その場では誰も同意せず、ドイツのメルケル首相と英国のキャメロン首相が見解を否定し*1、IMFのラガルド専務理事も「世界経済は08年のような危機にはない」との認識を示した。
内容に関しては、東京大学の岩本康志氏が図表にツッコミを入れている*2が、いったい誰が分析資料を作ったのかのか疑いをもたれているぐらいである*3。基本的な問題は既に述べられている通りだが、どうも資料作成者がリーマンショック前に、サブプライム・ローン問題が顕在化していたことを忘れている事を指摘したい。
サブプライム・ローンとは、主に低所得者を対象に返済額が増加していく住宅ローンで、債権価値が上昇を続ける不動産価格によって支えられていた。何らかの理由により景気が悪化すると、債務者は返済が不可能になる一方で、不動産価格の低迷で担保価値が落ちるため、一気に不良債権化する。銀行はかなりのリスクを抱えるわけだが、債券化により資本市場にリスクを分散させることにより、過剰に生じる事になった。そして2006年末には、これが問題として認識されていた*4。
単にある地域の景気が悪いなんてことは、常日頃の事象である。リーマンショックが甚大だったのは、やはり不動産バブルが生じており*5、その崩壊の影響が資産価値の下落効果*6で長引いたためであろう。現時点で先進国に崩壊しそうなバブルが生じているかと言うと、それはない。新興国に目をやると、中国の不動産バブルが弾けたような報道がされて久しいが*6、金融面でリンケージが少ないせいか、それで信用収縮が生じてはいない。
追記(2016/05/31 16:51):安倍総理はリーマンショックとは言っていないと主張しているが、英語のthe financial crisis 2008- を日本語に訳すとリーマンショックになることに注意すると、安倍総理が配った資料にはしっかり書いてあることが分かる。
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