労働問題の専門家の濱口氏が「他人の解雇、自分の解雇」で、経済評論家の池田信夫氏を揶揄しているが、少し誤解がある。もしくは手ぬるい。
濱口氏は、池田氏が2009年5月に普通解雇では無く整理解雇の解雇自由を主張するようになったと評価している*1が、2011年1月に解雇規制の議論をしているときは普通解雇に該当する事象を指摘している(togetter)。
1. 池田信夫氏は整理解雇に議論を絞っていない
「解雇権濫用と整理解雇」を見ると、普通解雇の濫用ではなく、整理解雇を議論していると主張している。
大竹文雄氏や柳川範之氏のいう解雇規制も整理解雇をさしており、一般的な不当解雇をすべて自由にせよというものではない。私の過去の記事も同じである。
両者を混同して、私が「正当な理由があろうがなかろうが、およそ解雇は自由でなければならないと主張している」などとばかげた主張を行なうのは、小倉弁護士と天下り学者に共通の特徴である。
上記のように池田信夫氏は主張しているのだが、解雇の議論では下記のような主張をしており、これは普通解雇に該当する事例であろう。
どっちが問題やねん?*2 ─ 時期が随分違うが、整理解雇以外に言及があるのは確かだ。
2. 整理解雇の自由化は、解雇権濫用法理の形骸化ももたらす
親切に解釈すると、整理解雇を自由にし、普通解雇を容易にしろと池田信夫氏は主張していると捉えることもできる。
しかし整理解雇を自由にすると、整理解雇の四要件の一つ「手続きの妥当性」も無くなる。これが無くなると「人員を一人リストラします。それはあなたです!」と言えるようになるので、やはり普通解雇も自由になってしまう。
整理解雇を自由にすれば、解雇権濫用法理も形骸化する。「正当な理由があろうがなかろうが、およそ解雇は自由」になるわけだ。ゆえに、池田信夫氏の主張には論理的整合性が見られない。
解雇自由なんて気安く言うから、泥沼にはまっているわけだが。
*1実は2008年5月に「日本をダメにした10の裁判」で整理解雇に言及している。
*2池田信夫氏のツイートだと現行法で普通解雇が不可能なように思えるが、実際は不可能ではない。大企業では配置転換先に事欠かずに、かなり難易度は高くなるかも知れないが。
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