2022年3月25日金曜日

犬笛(dog whistle)に煽動の意味はないよ

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ネット界隈で犬笛を吹くと言う表現を「SNSでそれとなく合図して人々を扇動する」こと「過激な行動をけしかけること」の意味で使っている人々がおり、何と『現代用語の基礎知識』に「人心を操る」と説明されているのだが、元になったはずのアメリカの政治用語の犬笛(dog whistle)には煽動の意味は無いから指摘したい。

大半の人には当たり障りの無い話に思えるが、特定の人々には彼らが共感する政治姿勢を示していると理解できる表現を犬笛(Dog whistles)と言う。「人心を操る」政治手法なのではなくて、批判を受けることを避けつつ、特定の支持者の支持を集めようとする行為。家族の価値と言っておけば、保守の支持を集められる一方で、リベラルの支持は失わないと言うのが典型例になる。犬をけしかけると言う意味ではない。犬笛を吹いたら、周りの人間には聴こえない音を感知して犬が寄ってくるように、政治家がある種の当たり障りの無いメッセージを出すと、批判を受けることなく特定の集団が寄ってきて支持してくれると言う隠喩である。

そもそも犬笛を吹いても犬はよってくるだけで、誰かを襲ったりはしない。笛が鳴っているだけでは、襲うべき目標が分からないわけでして。第1次世界大戦あたりで軍隊で使われていた笛*1と混同をしているのではないであろうか。

*1前線では命令を笛で兵卒に号令していた(The Signal Whistle)。

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