2020年4月17日金曜日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策は、勘所を押さえれば済む

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新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者数増加で、欧米の一部の都市でとられているロックダウン*1を実施すべきだと言う声が大きくなってきた。不安に駆られて主張しているのだと思うが、今日までの東京都の新規感染者数の推移を分析する限りは、ロックダウンせずに危険性の高い活動を抑制すれば十分足りるし、闇雲な対策は維持できなくなるので意味が無い。

東京都の日別のSARS-CoV-2感染者数から、ノンパラメトリック手法Nadaraya-Watson推定量で予測値を計算してみた*2。BandwidthはLi and Racine (2011)のp.66の記述にしたがった。これで、小池百合子都知事の3月30日の夜遊び自粛要請を評価してみよう(下図、クリックで拡大)。なお、概ね感染から発症するまでの潜伏期間が5日間、重症化するまで7日間とされるので、ある政策の効果は12日後に影響すると考える。

“夜の街”自粛要請の直後から、増加傾向が鈍化したどころか減少に転じている。パラメトリックな、SIRモデルを仮定した予測値からも、ここ5日間は下方乖離をした数値を記録している*3

東京都が検査数を絞っていると言う陰謀論があるが、厚生労働省が検査基準を示している*4上に、乱暴に絞れば口うるさい医師会が黙っているとは考えられないので、検査基準に見合わない患者が減っていると考えるのが妥当だ。

まだ十分なサンプルサイズではないし、同時に発生した他の要因が寄与した可能性もあり、暫定的な評価だが、小池都知事の夜遊び自粛要請は効果覿面と言える。対照的に2月27日の安倍総理の全国一斉休校要請は効果が無く、顕在化する前とは言え感染者数が増加している3月20日に取り下げることになった*5

夜遊び自粛要請は思いつきが上手くいったと言うよりは、クラスター対策班の地道な調査結果が示した可能性を、小池都知事が信じた結果だ。小池都知事の会見*6を振り返ろう。「厚生労働省対策本部クラスター対策班の専門家でいらっしゃいます西浦教授からご報告(によると)感染経路が不明な症例のうち夜間から早朝にかけて営業しているバー、そしてナイトクラブ、酒場など接客を伴います飲食業の場で感染したと疑われる事例が多発(しているので)都民の皆様方にはこうした場への出入りを控えていただくようにお願いしたい」とある。ネット界隈の一部で悪く言われている西浦氏だが、少なくとも重要な感染経路を一つ見抜いていた。

残念ながら、この施策はもっと徹底する必要があるし、また、この施策だけで十分とは言えない。

  • 都知事の要請に反応して営業を自粛した店舗が多かった*7わけだが、営業を続けている店舗もあるし、今後は資金繰りの都合で営業を再開する店舗が出てくると予想される。高井崇志衆院議員のように、危機意識が薄い客もいる*8。強制するにしろ、補償で釣るにしろ、追加の施策は必要になる。

  • クラスター対策班が掴んでいるリスクの高い行為は他にもあり、そちらの対策も徹底すべきだ。例えば、「ウイルスがつばに含まれるため、飲食店で向かい合って食事をするだけでリスクが高まる」と指摘されているが*9厚生労働省の企業向け新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策の資料では、従業員同士などでランチの同席を禁止するような項目(ぼっち飯推奨)は無かった。宴会や懇親会などでの集団感染が多数報告されているわけで、もっと強く対策を求めていくべきだ。

これまでクラスター対策班が掴んだ主要な感染経路を絶てば、都市ロックダウンのような戒厳令的な施策は不要になる可能性は高いし、むしろ医療や介護など都市ロックダウンで停止されない業務への対策を怠れば、都市ロックダウンをしても効果は薄い。イタリアでは、医療従事者が感染経路になったため*10、都市ロックダウン後も4週間感染拡大が続いた*11。逆に台湾と韓国はロックダウンなしに、うまく新規感染者数を少なくしていっている。勘所を押さえよう。ここ最近のクラスター対策班の西浦氏自身の発言がロックダウンの方に傾いていて困惑するのだが、もっと自らの調査結果に自信を持つべきだ。

*1都市のロックダウンは明確な定義が無い言葉なのだが、ここではライフラインを維持する職種以外の一般市民は、食料の買い出し等以外は自宅に引きこもることを、武漢ほどでなくても欧州ぐらいは強制する施策だと考えよう。日本の政府や地方自治体がこのロックダウンを実施する根拠法はまだ無いが、そこは公共の福祉を重視する憲法解釈を行って立法すればよいのでここでは考慮しない。

*2直観的には、加重移動平均の加重方法に正規分布を使ったものである。

*3関連記事:直近一週間のデータで基本再生産数R₀を推定する方法

*4厚生労働省『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第1版』

*5一斉休校を延長せず 首相、イベント開催「慎重に」:日本経済新聞

*6小池知事「知事の部屋」/記者会見(令和2年3月30日)|東京都

*7銀座ではすでに30日から4月10日まで2週間の休業を決めたクラブが30以上。おそらくその半分は再開することができずに潰れてしまう」と言う声や、東京ではないが「大阪市西成区の歓楽街「飛田新地」の飛田新地料理組合は3日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、加盟する約160の料亭全店の休業を始めた」と言う報道があり、また吉原の性風俗店も1店を除いて営業停止したと言うツイートがあった。

*8立憲・高井衆院議員が離党届 新型コロナ渦中に「性風俗店」:時事ドットコム

*9行動制限ないと重篤者85万人/「接触機会8割減が必要」強調 クラスター班、北大教授試算:朝日新聞デジタル

*10家庭内感染が広がった上、地元の開業医にマスクや防護服が行き渡らず、医師や看護師の感染が急増」したそうだ。

*11イタリア、新型コロナの新たな死者は431人 3月19日以降で最少 - ロイター

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