2020年4月4日土曜日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策で、都市ロックダウンは有効か?

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感染者数の増加で、欧米の一部の都市でとられているタイプの“ロックダウン”を東京でも実施すべきだと言う声が大きくなってきた。疫学者も少なくとも一つのチームはそう主張している*1。しかし、(1)現状の感染パターンからは大きな効果を望めないし、(2)失業者のさらなる増加*2や学業の阻害になる*3一方で、(3)ロックダウンの解除後に感染者の増加ペースが元に戻る可能性がある。

都市のロックダウンは明確な定義が無い言葉なのだが、ここではライフラインを維持する職種以外の一般市民は、食料の買い出し等以外は自宅に引きこもることを、武漢ほどでなくても欧州ぐらいは強制する施策だと考えよう。日本の政府や地方自治体がこのロックダウンを実施する根拠法はまだ無いが、そこは公共の福祉を重視する憲法解釈を行って立法すればよいのでここでは考慮しない。

効果は怪しい。今まで報道されてきた感染クラスターの多くは医療や介護などの場で生じており、ロックダウンによって業務を停止させることはできない。イタリアのロックダウンでも、3週間経過しても新規感染者の減少には至っておらず、死亡者数も横ばいに留まり、潜伏期間や重症化までのタイムラグを考えても効果は大きくなかった。潜伏期間が5日・重症化するまで7日間と言われるので、抑制レベルの効果*4があったら12日間で毎日の感染者数は減少に転じるはずだが、3月10日から3週間かかって増加ペースがなだらかになったのに留まっている。つまり、通勤や職場以外に、大きな濃厚接触の機会がある。

既に4月に入ってからは、性風俗や(ホステスがいる)接待飲食といったリスク低減が不可能な業種は休業に追い込まれつつある*5し、カラオケ店なども休業を宣言している。ライブハウスの事例以外は、スポーツジムを含めて飲食を伴う場での感染が目立ったが、手洗いの徹底やテーブルや座席の間隔をあけるなど、既に取られている感染防止策が有効だと考えられる。映画館も自主閉鎖や、座席間隔をあける対策が取られている。事務所などで集団感染が立て続けにおきれば話は別だが、概ね予防措置は取られている。そして、人々の行動は、自主的にロックダウンされた都市に近いレベルで抑制されている*6

追加の施策が不要と言うわけではない。医療・介護・飲食(特にキャバクラなどの接待飲食、屋台)・保育/幼稚*7での定期的な抗体検査と隔離措置などはどうであろうか*8。抗体検査は感染初期の感度が低いのではないかと言う話もあるが、無症者も感染源になると言われる*9ので自己申告では限界があるし、漏れが生じても基本再生産数R₀を下げられたら抑制政策になる。飲食は、他にテーブル間距離や換気レベルを特別立法による規制強化(自主規制では十分でないところもある)をしてもよいし、アクリル板による飛沫拡散防護を、客席の間やレジの前に設置してもよい。中国人の試行錯誤を真似しよう*10。危険なサービスを明快に言及した小池都知事の決断も悪くない。ソープランドやキャバクラがSARS-Cov-2感染予防策をとるのは不可能だ。

温暖になるにつれて勝手に収まってくれないかとも思うのだが、しばらくは手洗い・うがい・洗顔をせっせと頑張ろう。

*1人と人との接触 8割削減で感染収束へ 専門家グループ | NHKニュース

*2アメリカでは失業保険申請が急増し、スペインでも失業者の急増が報道されている(アメリカの失業保険申請、2週間で1000万件 過去最多を更新 - BBCニューススペイン、新型コロナの「ロックダウン」で約90万人失職 - ロイター)。

*3生徒と学童に自習を強いることになる。そこそこ良い大学の講義であれば教員も学生もネットで何とかなるであろうが、通信大学の卒業率を見るに通学しないとやる気が維持できない学生もいるであろう。

*4無対策のSARS-CoV-2のR₀は4~6と言われているので、封じ込め/水際(R₀=0)→抑制(0<R₀<1)→緩和(1<R₀<4.0)ぐらいの感覚に捉えよう。

*5銀座ではすでに30日から4月10日まで2週間の休業を決めたクラブが30以上。おそらくその半分は再開することができずに潰れてしまう」と言う声や、東京ではないが「大阪市西成区の歓楽街「飛田新地」の飛田新地料理組合は3日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、加盟する約160の料亭全店の休業を始めた」。客が来なければ、店を開けておくほうがコストがかかると言う判断なのかも知れない。

*6COVID-19 Community Mobility Reports

*7乳児や園児は感染予防ができないので、中高などよりもずっと感染者クラスターを形成しやすい場所になる。

*8体温測定など健康管理の加えての措置になる。

*9世界保健機関(WHO)のレポートでは、感染は主に発症者からとなっているが、発症していても元気な人もいる。

*10中国の食堂がセンター試験の会場みたいになってる|中国情報局@北京オフィス|note

台湾の工夫も興味深い:高校以下新学期開始!飛沫感染防止に特製板 - ニュース - Rti 台湾国際放送新型コロナ 用意周到だった台湾の学校再開 | 麗しの島から | 福岡静哉 | 毎日新聞「政治プレミア」

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