2019年12月21日土曜日

ジェンダー社会学者が無視するマンガ/アニメ/ゲームにおける女性キャラクターの描き分け

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ジェンダー社会学者小宮友根氏が挙げた女性キャラクターの理由のない露出表現の例*1に対して、koshian氏から最近のゲームのキャラクター選択画面における女性キャラクターは、所謂ビキニアーマーのような露出度の高い格好をしていないと言う批判がされ*2、キャラクター選択画面に限らなければ、今でもビキニアーマーを着た女性キャラクターは枚挙にいとまがない*3と言う批判への批判がされていた。

1. 同一の作品世界に、露出度が高い女性も低いのもいる

さて、koshian氏の主張そのものはさすがに無理があるわけだが、koshian氏が感じた違和感は間違っていないかも知れない。小宮友根氏は「個別の女性を描くためのものではなく、「女性」というカテゴリーを性的客体として意味づけるもの」の例として、ビキニアーマーを着た女性キャラクターを挙げているからだ。koshian氏が反例として挙げたFateシリーズを見てみると、露出度が高い女性キャラクターも、そうでない女性キャラクターもいるので、小宮氏の主張は成立していないことが分かる。

2. 女性キャラクターに共通する特徴は、骨盤まわりの骨格

Fateシリーズ以外を見てみても、女性キャラクターに共通する特徴、言い換えれば女性というカテゴリーに属するキャラクターが持つ共通項は露出度ではなく、骨盤などの骨格が分かるような体型となっている。女性は三角形、男性は逆三角形と言うトイレマークと同様。萌え絵の描きかたのノウハウ本が色々と出ているが、髪や服装、頭身などに多くの選択肢がある一方で、ここは他に選択肢は提示されない。

太ももが露出するデザインが多い気がするが、これも女性キャラクターが女性と分かるようにするものであろう。逆に、だぼっとした長ズボンの女性キャラクターは少数派。そして、その少数派も男性が履かないタイプのパンツと認識できるように描かれている。

CAPCOMの『モンスター・ハンター』シリーズの装備をじっくり見ると、体型が分かるようにして男女の描き分けをしていることが分かる。百を超える種類の装備品の中には露出度高めなものもあるが、安易に露出度は上げていない。

男性キャラの装備でも露出度が高いものもある。右のキリン装備は、男女ともに露出度が高い。あえて言えば、女性の方が胸を隠して太ももが露出しているが、その程度の差異である。なお、ローマ帝国の兵士だったら、シールドで振り下ろされる武器を受け止めて、空いたわき腹にグラディウスを一刺ししそうな防具である*4が、このシリーズには対人戦闘は無い。巨大な怪獣に接近して殴りあうのが謎なわけだが。

3. 巨乳や露出度の高い女性キャラの存在は描き分けの都合

男女の描き分け問題の次に、女性キャラクター間の描き分け問題がある。身長の高低や髪型、肌の色などの他、バストのサイズや、着用している服の差異や着こなしといった個性が、女性キャラクター間で個性が異なることが分かるように描かれる。女性キャラクターが何人もいたら、露出度の高いキャラ、巨乳キャラが出てしまうと言うことだ。アニメ『のうりん』の良田胡蝶が描かれたポスターが色々と非難されていたが、他にも主要女性キャラクターは3名いる。つまり、アダルト向け18禁ゲームなどで例外はあるであろうけれども、一般の作品群においては巨乳や高露出は「個別の女性を描くためのもの」でしかない。また、キャラの描き分けのためと言う理由もある。

4. まとめ

実在の女性が描かれない表現物の女性の性的モノ化の倫理的問題は、性的魅力が過剰に強調された女性キャラクターが女性一般があるべき表現として認識されるかがポイントとなり、小宮氏が参照しているイートン論文*5でも一節を費やして議論している。小宮氏も、男女の描き分け、女性の間の描き分けがどのようになっているのか、実際のゲームやアニメを見ながら詳細な検討をすべきであった。すると、画一的な古典的名画の世界*6とは異なり、把握できないぐらいのバリエーションがある事が分かり、なぜマンガやアニメ、ゲームの話をしているのか困惑することになったであろう。ところで小宮友根氏のエッセイの図、一貫性が無いように思える*7。何も真面目に考えていないのかも知れない*8

*1炎上繰り返すポスター、CM…「性的な女性表象」の何が問題なのか(小宮 友根,ふくろ) | 現代ビジネス | 講談社(4/9)(図2.理由のない露出)

*2社会学者とキレンジャーの錯誤 - 狐の王国

*3検索するとマニアックに色々と例が挙げられているが、『オルタンシア・サーガ』のフォルテさんはまさにビキニアーマー的なお召し物となっている。こういう服装しか許されなくなった世界の女の子は、きっと腹斜筋のトレーニングに余念が無いであろう。

*4ケルト人やゲルマン人を相手したときの基本戦闘技術である(関連記事:ギリシャのファランクスは習ったが、ローマの戦術については何も知らない人は読むべき「戦闘技術の歴史」)。

*5Eaton (2012) "What's Wrong with the (Female) Nude?" In Maes and Levinson "Art and Pornography: Philosophical Essays," Oxford University Press

*6Eaton (2012)によれば、名画の中で表現される女性はgenericな存在、つまり描き分けされていない。同一の絵画の中に、同じような顔と体型の女性がたくさん描かれている場合もある。

*7シンカ論:㉕信じられるか?これ学者なんだぜ。」で批判されていたのだが、小宮友根氏とふくろ氏、自分が出した不可を、可の例として出している。

*8今回指摘したことの他、過去のフェミニストの議論と小宮氏の議論では、性的モノ化された表現物の定義に相違があるし、過去のフェミニズムの議論からは、そもそも性的モノ化された萌え絵が有害の可能性は低いし、小宮氏の日本語表現は無駄に難解で練られていないように思える問題がある。

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