2018年10月31日水曜日

夫から殴られても暴力を受けたと認知しない妻の割合

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一昨日のエントリーで、怒鳴ったり、ちゃぶ台を返したりするのではなく、夫に殴られた事を暴力だと認識できない妻は日本にはいないのでは無いかと書いたら、申告数の何倍もの数がいると言うかのような反応が返ってきたので、実際にどれぐらいいるかを確認してみた*1。いないと言うのは大袈裟だったが、申告数の1割弱~4割弱ぐらいに留まるようだ。欧州の方が日本よりも殴られた事を暴力と認識する程度が高い余地は多くない*2

男女間における暴力に関する調査(平成29年度調査)の図1-1-2を見ると「平手で打つ」「足でける」「身体を傷つける可能性のある物でなぐる」「なぐるふりをして,おどす」と言うような夫婦間の行為のうち、何を暴力だと思うかの統計がある。手を出したら暴力だと思っている人が大多数だ。

夫婦間の行為で「身体を傷つける可能性のある物でなぐる」は93.2%が「どんな場合でも暴力にあたると思う」としており、怪我の可能性がある行為は暴力と認識されている事が分かる。「平手で打つ」は、72.4%が「どんな場合でも暴力にあたると思う」とし、22.0%が「暴力にあたる場合も, そうでない場合もあると思う」、1.8%が「暴力にあたるとは思わない」としている。22.0%がはっきりしないが、これも怪我の可能性であろう。

調査デザインがいまいちと言われるが、さすがに官庁が行なっているだけあって、全体の有効回答率は67.5%、女性に限れば70.0%となっており、他の調査と比べてもかなり高い。サンプリング手順も概ね教科書どおりだし、女性に限った回答数も1,807と4択としては十分にあるので、実数の1割弱~4割弱ぐらいと言うのは信じても良いであろう。なお、性的暴力に関しては観測値比で3割~4割。心理的暴力に関しては項目によっては10割を超える項目もある。

ところで、以前のエントリーでの議論の中心、龍谷大学の津島教授と浜井教授が採用した調査方法では、平手で打たれた、突き飛ばされたといった具体的な行為について訊いているので、何が暴力になるかと言う面では文化面からの差異は生じない。ゆえに上の考察による補正は不要だし、『性差別が強く性教育が行き届いていない国では、被害者が…「暴力であること」自体を認知できない』ことを理由に、日本では暗数が大きいとする社会学者のような研究をしているフェミニストの小松原織香氏(font-da氏)の指摘は頓珍漢なものとなっている事は重ねて指摘しておきたい。他に2つおかしい話があるわけだが。

*1前のエントリーにも脚注として付記しておいたが、いまいち読まれていないようなので、別にエントリーをあげておく。

*2日本の方が欧州、特に西欧よりもこの程度が低いことを示す強い根拠は無いことには注意して欲しい。北欧・フランス・ドイツの方が性差別が強く性教育が行き届いているため、暴力を暴力と認識できると言うのが理屈のようだが、その教育効果の測定値があるわけでは無いようだ。

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