2018年5月1日火曜日

“歴史的な南北会談”は分析不可能な状態

このエントリーをはてなブックマークに追加
Clip to Evernote
Pocket

2018年4月27日の北朝鮮と韓国の板門店での首脳会談を、左派リベラルの言論人と韓国研究者の一部は好意的に評価しているようだ。文在寅大統領の外交手腕を高く評価し、非核化協議への影響力を失いつつあると安倍総理の外交方針が批判されている。実際、今回の合意を見ると平和条約を視野に入れることで、朝鮮戦争への関与程度が低い日本が排除されてしまっている。しかし、北朝鮮の態度の変化を説明する要因が特定できていないので、北朝鮮のコミットメントの強さなどが分からない状態である事を忘れてはいけない。これによって事態の評価は、180度変わることになる。

1. 朝鮮半島問題の専門家も事態の展開は読めていなかった

専門家と言われている人々も、情報が欠落しすぎて内心困惑しているのが実情に思える。かなり意地悪だが、朝鮮半島を専門とする木村幹氏の2017年12月15日のツイートを見てみよう。

氏の2018年4月22日のツイートを見てみよう。

木村氏以外の真面目に考えている人々を見ても、今の事態を予測していた人はいないと思うが、北朝鮮の事情を把握するのが困難なことは分かる。

もちろん中国も参加した本格的な経済制裁が効いたのか、そろそろ国連の制裁決議に軍事オプションが入る事を怖れたのか、何かの事故や事情で核開発が不可能になったのか、金正恩氏が態度を変えた理由ははっきりしていない。しかし、経済制裁の効果に懐疑的な事を述べていた政治学者でさえ、効果があった可能性を再考せざるを得ない。

2. 北朝鮮の態度変更理由が予測と是非を言うのに必要

何が北朝鮮の態度を変えさせたのかが分からないと、そして、経済制裁に効果があったとするならば、文大統領と安倍総理の評価は入れ替わる事になる。報道が正しければ経済制裁の強化はトランプ大統領と安倍総理が推進しており、文在寅大統領は消極的であった。国連演説ではもちろん、東欧にまで行って経済制裁への参加を呼びかけていた安倍外交が成果を挙げ、文氏はその果実にフリーライドしたことになる。

何が金正恩氏を動かしたのかがはっきりしないと、北朝鮮のコミットメントの強さも分からない。はっきり方針を変えて核兵器に頼らない安全保障体制の確立を目指すのか、やはり核抑止力の保有は目標で今の融和姿勢は単なる時間稼ぎなのか、両方の可能性が残されている。1994年の米朝枠組み合意のときは核開発を放棄したフリをした。北朝鮮が真面目であれば文在寅氏は有能政治家だが、また騙されればヒトラーに宥和政策をもって望んだネヴィル・チェンバレンを超える愚者と言うことになる。

3. 水晶玉を覗き込んでも外れるリスクは高い

日本のメディアに限らず、朝鮮日報などの識者コメントでも疑心暗鬼になっている。専門家の中では(唯一?)木村幹氏が「今回の南北会談が一定の成果を上げた」「大国に従いながら、その力を利用することで、自立に向けて一歩ずつ進もうとしている」と文在寅政権を褒め称える一方、「日本にとって事態は深刻」と安倍外交を悲観している*1が、まだそんな事は分からないはずだ。少しは経済制裁の効果を再考せざるをえなかった事を、反省して欲しい*2

*1(耕論)南北、そして米朝会談へ 礒崎敦仁さん、佐橋亮さん、木村幹さん:朝日新聞デジタル

*2木村幹氏は政治学者なので経済構造を考えなかったのだと思うが、北朝鮮が経済成長をして来たと言っても、中国や韓国からの外国直接投資、それによる衣類製品の輸出拡大、国外労働者からの送金によって改善していた程度は小さくない。つまり、国外に依存した経済成長であるので、経済制裁で大きな打撃を受けやすくなっている可能性がある。

0 コメント:

コメントを投稿