2018年1月1日月曜日

NVIDIAのデータセンターにおける消費者向け製品用ソフトウェア利用禁止は絶対とは限らない

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大手ビデオ・コントロール用半導体メーカーNVIDIAが、データセンターの大規模クラスターで、GeForceやTITANと言った消費者向けGPUを導入させないために、ソフトウェア利用規約(EULA)を改定した*1。今時のハードウェアは現実的に、それに対応したドライバー・ソフトウェア等が製造元から提供されないと役立てる事ができないので、実質的に同社のハードウェアの利用が制限される事になる。しかし、問題の条項が法的に意味を成すのかは、自明ではない。

1. EULAの条項が裁判で無効になることもある

EULAに書いてあると守らないといけない気がすると思うが、実はその条項が裁判で無効になった事例がある。1994年から2002年まで大手ゲーム機メーカーなどが、中古品売買禁止を主張し中古ゲームショップと裁判になった事例があるが、司法は著作権者に中古ソフトの流通を規制する権利が無いと結論した*2。米国や欧州の司法でもEULAの条項が一般に有効と見なされる事はなく、裁判では個別条項の妥当性が評価される事になり、無効とされた条項もある。OracleはEULAでライセンス転売を禁じていたが、EU司法は転売を合法とした*3。つまり、EULAに書いてあるからNVIDIAの主張が合法とは限らない。著作権法でユーザーの利用形態をどこまで制限する権利があるのかは自明ではない。

追記(2018/01/05 02:16):裁判の管轄が米国デラウェア州になると主張している人もいたのだが、外国企業であっても、日本企業を訴えるときは日本で裁判を起こしている。組織内不法コピーの事例が多くあるが、例えば2001年のアドビ、アップル、マイクロソフトが東京リーガルマインドに対して起こした裁判は、東京地方裁判所で行なわれた。

2. データセンター以外でも連続稼動時間などを制限すべきに

NVIDIAが公言する禁止理由は、合理性を欠くように思える。消費者向けハードウエアはデータセンター用に設計された製品ではないので、対応ソフトウェアはデータセンターで利用禁止と言うのは、非直観的だ。

ハードウェアの製造者責任は取れないと宣言し、非推奨とするだけでは不十分なのか。エラー訂正機能がある主記憶装置(ECCメモリー)や低動作クロックがシステム全体に安定性をもたらすと言うのであれば、それを説明する方が自然であろう。

そもそもデータセンターの方が電力、温度、湿度などは管理されており、ハードウェアの稼動環境としては良好である。ハードウェアが連続稼動に耐えないと言うことであれば、データセンター以外でもハードウェアの連続稼動時間などを制限しないとおかしいことになる。

さらに商業利用では推奨しないとあるのだが、大規模計算クラスターを会計や販売などの決算系に使うわけではなく、企業ユースと言っても求められる動作信頼性は高くは無い。大学などでの研究目的であれば制限しないと言うが、企業ユーザーがデータ分析に使う場合と、そう大きな差があるわけでは無い。

3. NVIDIAが妥当かは裁判をしてみないと分からない

データセンターでは利用禁止と言うのは、かなり無理があるように思える。顧客のことを心配してではなく、支払い能力の高い企業ユーザーには高い製品を買ってもらう価格差別が機能しなくなることを心配しているのでは無いであろうかと勘ぐってしまう。消費者向けTitan Vと、企業向けTesla V100は、価格が倍以上異なる。どこかホスティング事業者が消費者向けハードウエアで大規模クラスターを構成し、NVIDIAがライセンス契約違反で訴訟を起こすような展開になればはっきりするのだが、NVIDIAがそこまでやる気かは定かではない。消費者向けGPUをデータセンターで使いたい顧客は、販売部と相談するように言っている。

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