2017年11月30日木曜日

福島の甲状腺がん検診についてあれこれ言う前に

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福島第一原発の災害・事故による放射性物質の流出による被爆の影響を見るための、高性能エコー診断システムによる甲状腺がん検診の是非について、あれこれ議論があるようだ。週刊誌のアエラが、甲状腺がん検診を打ち切ることで、東電の損害賠償額を小さくしたがっていると言うような陰謀論を報じている*1のだが、似たような話を信じ込んでいる人々をネット界隈で見かけた*2。あれこれ言う前に、常識的な話は確認しておいて欲しい。甲状腺がんの過剰診断はNHKドキュメンタリー*3でも報じられている内容で、世間にそう誤解が広まっているとは思わないのだが。

1. 過剰診断問題

医療的には、過剰診断問題が危惧されている。甲状腺がんは進行が極度に遅い一方で、甲状腺の切除は健康に被害を及ぼすので、極小サイズの腫瘍を発見して手術をする必要は無い。しかし、甲状腺がん検診で腫瘍が見つかったら、手術をしたくなるのが人情のようだ。実際に、外国での研究では、検査精度の向上で甲状腺がん発見率が上昇すること*4、それにも関わらず甲状腺がんの死亡率は低下しない事が報告されている*5

2. 疫学的には概ね決着

疫学的にも、福島の甲状腺がんのデータを精緻にとってももう大きな意味が無いであろう。放射性物質が拡散した福島県が処置群になるわけだが、比較のための対称群として他県の子どもを同じサンプリングで同じ精度で測定する必要がある。そうでないと、科学的に厳密に甲状腺がんが増えたか減ったかは言えない。環境省は2014年に長崎、甲府、弘前で4,400名を対称群として調査しているが、有意な差は無かった。県内データでも、汚染程度と発がん率に明確な関係は見られていない。

3. 統計に無理解な医者の戯言もある

過去データとつき合わせて甲状腺がんが増えていると言い出している医者もいるのだが、検診率や検査精度が異なるため、本来は比較してはいけないものを比較している。福島県の場合は新しい機材による検査なので、他県の検査よりも甲状腺がんを発見しやすいし、原則として全員が受けるスクリーニング検査になっているので、体調不良などの自覚症状がない人々までチェックしてしまう。過去データでは体調不良を感じるなどした来院者を対象としたもので、人口あたりの甲状腺がん発見率は低くなる。

4. 状況の変化は考えづらい

今後、状況が急激に変化するとも考えづらい。チェルノブイリ原発事故では4年ぐらいたってから小児甲状腺がんが急増しているが、既に福島第一原発の災害・事故から6年が経過しているが罹患率の上昇は無い。チェルノブイリでは牛乳などを通じて放射線ヨウ素が摂取され、海産物を食べないヨウ素不足気味の内陸の人々がそれを甲状腺に蓄積したことが、甲状腺がんの要因と考えられている。福島の場合は早期に牛乳などの摂取を規制した上に、日本人の食習慣からヨウ素吸収率は低いため、放射線ヨウ素が蓄積されたとは考えづらい。そもそも、流出した放射線物質の量も相当異なる。

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