2014年9月13日土曜日

ガロア理論の本を読むための本「天才ガロアの発想力」

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何の役に立つのか良くわからない数学の定理と言えば、代数学の基本定理とアーベル・ルフィニの定理が有名だと思う。前者が「次数が1以上の任意の複素係数1変数多項式には複素根が存在する」と言うのに、後者は「五次以上の代数方程式には解の公式が存在しない」と言うわけで、答えはあるけど教えてあげないよと言われている気分になる。代数学の基本定理の証明は複素数を勉強してれば出てくるぐらいで易しいが、アーベル・ルフィニの定理は数学科の学生以外は馴染みの薄い体論、つまりガロア理論を勉強しないと理解できず敷居が高い。テキストも数学科の学生向きで難解だ。そこで数理経済学者の小島寛之氏がガロア理論を学ぶ下準備をするための本として書いた*1のが「天才ガロアの発想力」だ。

後書きに草場公邦氏の「ガロワと方程式」に感動したと書いてあって、本書の必要性は無いのではないかと思ったのだが、意外に気軽に読めて面白い本になっている。正確に言うと、やはりここを下準備すべきかと言う共感が沸く。

本書ではガロア理論の紹介本ではページ数を使っているラグランジュ・リゾルベントの説明がざっくり割愛されている。交代群もケーリーグラフも出てこない。逆に、拡大体の自己同型写像の不変要素(固定体)の特徴や、体の拡大と自己同型写像の縮小の関係、剰余類や1のべき根、そしてハッセ図などが説明される。証明を追いかけるために、内容がより絞られていると言っていい。アーベル・ルフィニの定理の証明を追いかけた事がある人であれば、本書が良く練られた取捨選択をしている事が分かるであろう。そう、本書はガロア理論の紹介本ではなくて、ガロア理論を学ぶ下準備の本なのだ。

残念なところもあって、5次以上方程式に対してガロア系列が作れない理由について何も書かれていない。自己同型写像Gmとその正規部分群Gm-1でつくる商群がアーベル群になることから、Gmが3次の巡回群を含む5要素以上の置換群だと、Gm-1も3次の巡回群をすべて含むので、自己同型写像が縮小していかないことを説明するのはページ数的に無理があったのであろうか。しかし第8章でトーラスを説明しているわけで、そこを削ってでも何かの説明を付け加えて欲しかった。

何はともあれ本書は下準備の本であって、本書だけを読む意味は無いであろう。「ガロワと方程式」でも、アルティンの「ガロア理論入門*2でも、「ガロア理論の頂を踏む」でも、アーベル・ルフィニの定理に到達できるテキストに進まないと、ガロア理論を知ったかぶることはできない。それは私のような純粋文系には時間がかかる作業ではあるが、きっと本書が助けになるであろう。

*1あとがきにそのように書いてあった。

*2関連記事:文系が「ガロア理論入門」を読むとどうなるの?

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