2014年6月13日金曜日

文系が「ガロア理論入門」を読むとどうなるの?

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線形代数と群論の復習をかねて、名著と名高い大数学者アルティンの「ガロア理論入門」を読み始めてみたのだが、動悸と息切れが止まらないので紹介したい。数学科の3年か4年の学部生が履修すると言う体論の本なのだが、純粋な文系の人でも5次以上の一般方程式は累乗根で解けないというアーベルの定理まで到達する事ができる*1し、演習問題もついているのでお買い得感がある。

原著よりも邦訳版の方が優れた数学書になっていると思う。アルティンの講義ノートが本文になるのだが、訳者の寺田文行氏が各節に概要と設問を追加し、巻末に模範解答を用意している。講義ノートだけに理解や記憶があやふやなままでも前に行ってしまう危うさがあるのだが、訳者が追加した部分がそれを防止している。もはや違うコンテンツになっている気もするが、数学者が数学学習書を訳す場合には、これぐらいの事をしても良いと思った。

難易度的にはそれなり高い。線形代数を駆使するところに独自性があるらしいのだが、それで証明が複雑になっているわけではないから、意外にそこは気にならない。ガロア理論の概要などを説明した本を、事前に読む必要も無い。むしろ群論について習熟している事が前提になっているので、普段は群論に親しみが無い文系プログラマとしては、そこが苦労する。第一章でわざわざ線形代数の説明をしている一方で、アーベル群、商群、巡回群は説明なしに使われる。「群論への30講」は読んだのだが、だいぶ忘れてしまっていたので、便利な検索サーバーが欠かせない。設問は無理に解かなくても良いと思うが、本文に例示が少ないので目を通した方が理解が進む。なお、数学者特有の言い回しがあって、日本語的に理解できない部分は一箇所あった*2

これが何に応用できるのかと考え出すからワクワク感はほとんど無いのだが、それぞれの定理の証明はそう長くはないし、そう複雑怪奇な概念を応用しているわけではないから、何とか理解できそうな気がしてきて、ついつい無呼吸読書をしてしまう。半分ちょっとまで進んだところで、何かの呪いな気がして来たのだが、もはや後に引けない感じだ。いや訳者後書きを読んだら「難解な部分をマスターする最良の方法は,数人でセミナーを持ち,討論しながら進めることである.」とあるのだが、ぼっちは読んではいけないのか、これ。

確かに旅は道連れ世は情けと言うし、そう値段が高い本でもないし、恐らく解析学の難しい本などよりはずっと取り組みやすい。一人で完読できる自信はないのだが、あなたも読み始めてブログなどに苦労を書き込んでくれたら、きっとあなたの不幸にひかれて読み進められる気がする。嗚呼、ぼっちで寂しい。仲間が欲しい。あなたにも、この読みきれそうで読み進まない蟻地獄的な読書を体験して欲しい。文系が「ガロア理論入門」を読むと、巻き添えが欲しくなるようだ。

追記(2014/06/26 00:30):何とか読了。最後の第3章4節「コンパスと定規による作図」は、さすがに図が無いと理解しづらい感じがしたし、2m+1の因数分解は「作図可能な正多角形 [物理のかぎしっぽ]」を見てしまったが、純粋な文系でもGoogle様のおかげで読み通せることが分かった。

*1アーベルの定理で終わりではなく、続けて他の議論が開始されるため、角の三等分問題を含む作図の議論がクライマックスになるようだ。

*2位数がaの要素Aと言われても、位数って要素の数だったよーな気がして来る。ここは位数はAが生成する巡回群の元の個数と思えば良いらしい。直接関係はないが、数学の問題は「証明しろ」と言う意図で「…は~」のように書いたり、問題文の意味が分からないケースが多くて困る。

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