2014年6月10日火曜日

クルッグマンのインフレ療法は加速しない

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クルーグマンのかんたんな「長期停滞」克服法は機能するのか?』と言うエントリーで、人口増加の鈍化による投資需要の減少を高いインフレ率で補おうとするノーベル賞経済学者クルッグマンの療法は、インフレ加速していくと議論をしている。しかし、ルーカスのインフレ加速の議論を連想しているのだと思うが、クルッグマンの療法自体はインフレ加速しないようになっている。

まずは、均衡実質金利を考えよう。クルッグマンは明示的に数理モデルを提示していないのだが、It's ba+k!論文での言及から世代重複モデルで計算すれば良いと思う。以前に「世代重複モデルで見る少子高齢化と利子率」で数理的な紹介をしたが、減価償却率などを考えなければ、人口増加率が均衡実質金利を決定する事が分かる。なお、この均衡実質金利は長短両方を裁定したものになるが、安定的で上昇はしていかない。

次に、投資量を考えてみよう。実質金利>均衡実質金利であれば過少投資になり、実質金利<均衡実質金利であれば過剰投資になる。実質金利=均衡実質金利であれば丁度いい。ここでフィッシャー方程式:実質金利=名目金利-期待インフレ率を思い出して欲しい。均衡実質金利が負の値であれば、名目金利をゼロにして、かつ期待インフレ率をプラスにしないと、実質金利=均衡実質金利にはならないであろう。

最後に、必要な期待インフレ率が加速するか考えよう。上述の通り、均衡実質金利は人口増加率で決定されるため、加速しない。安定的だ。すると、人口増加率が一定であれば、実質金利=名目金利-期待インフレ率も一定で良いことが分かる。つまり、期待インフレ率も一定でよい。だから投資量を維持するために(期待=実現と置いて)インフレ加速させる必要は無い。ブログ主は国債金利が気になるようだが、名目金利も加速しない。

本当に均衡実質金利がマイナスなのか疑問があるし、インフレ率を上手くコントロールできるか良く分からないし、均衡実質金利を実現したとしても投資量全体は減っていく事にはなるのだが、人口増加率/減少率が安定的であればインフレ加速するようなものでは無い。

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