2014年4月12日土曜日

悪意があれば懲戒解雇、悪意が無ければ普通解雇

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捏造、改鋳、剽窃が認定された理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの小保方晴子氏が開発したとされる刺激惹起性多能性獲得(STAP)幹細胞のNature誌に掲載された論文だが、理研の管理責任を問う声があがる一方で、早稲田大学の教育体制やその学風まで中傷し、さらに彼女の中学生の頃の読書感想文まで持ち出して人格攻撃を開始している人々もいる一方で、日本の科学研究の信頼が揺らいでいると危惧する人も出てきた。そんな中、調査委員会の最終報告書が公表され、その後、小保方氏の記者会見が行われた。世間で小保方氏に同情の声が上がっているらしい*1が、その主張を汲み取っても、実質的な処分は変わらないであろう。

1. 小保方氏は他の研究者や世間を騙す意図は無いと主張

小保方Nature論文にある問題については、調査委員会と小保方氏の間で意見に違いは無いようだ。小保方氏は言い回しが気に入らないようだが、(1)博士論文の写真の流用による捏造、(2)電気泳動実験の写真の改鋳、(3)実験手順の説明の剽窃は双方とも認定している*2。小保方氏は、(1)はケアレスミスであり、(2)と(3)はルール違反だと知らなかったと主張している*3。状況証拠を整理すると小保方氏の主張には様々な疑義があるのだが、小保方氏は他の研究者や世間を騙す意図が無かったと力説している。

2. 小保方氏の意図に関わらず解雇対象になり得る

この主張に、どのような意味があるのであろうか。他の研究者や世間を欺く意図が無かったと主張するのは勝手だが、捏造、改鋳、剽窃の内容を見る限り、研究者として雇われている人が本当に常識的な研究手法のイロハを知らなかったと言っている事になる*4。他の研究者や世間を騙す意図が無ければ懲戒解雇の対象から外れるのかも知れないが、その場合は裁量権の大きいポジションであるユニット・リーダーとしての能力に問題がある事が証明されるので、普通解雇の条件を満たしている可能性は低くない*5。これは小保方氏がSTAP(幹)細胞が作成可能であるとしても厳しい処分が下されうると言う事なので、もはやSTAP(幹)細胞が作成可能かは重要ではない。

3. 他の人々の責任が焦点

小保方氏の責任は明確だと思われる。厳しい処分が下されるであろう。幾ら世間が同情しても揺るがない。しかし、共著者、特にもう一人の責任執筆者の笹井芳樹副センター長は、その実績から理研が庇う可能性がある。また、若手の大抜擢として小保方氏の採用に関わった人々が誰なのか、その責任がどうなのかは明確にされるのか分からない状況だ。早稲田大学はテクニカル・ライティングの授業があるので剽窃や捏造をしてはいけない事は教えていたらしいが、研究室での教育体制は見直しが求められるであろう。全体として状況は混沌としているのだが、こと小保方氏に限っていえば方向性は明らかなように感じる。

*1まともな世論調査は無いので感覚的なものしか分からず、SNSでも報道でも小保方氏に批判的なコメントは多く見受けられるので、本当に擁護者が多いかは分からない。

*2理研の最終報告書を参照。

*3小保方晴子さん記者会見詳報」を参照。

*4STAP細胞はあるのか  - NHK クローズアップ現代」では、多くの研究者が小保方氏の主張と研究手法に懐疑的なコメントを出している。

*5判例によると『高度の職業能力を有することを前提として中途採用された労働者が期待された能力を発揮しなかった事案においては、使用者に求められる配転等の解雇回避努力の程度が軽減されるなど、能力不足・適格性欠如を理由とする解雇の有効性は、通常の労働者の場合よりも肯定されやすい』(JILPT)。小保方氏と似たような事例で、2009年12月に東北大を懲戒解雇された元助教の女性が地位保全を求めていた裁判は、2013年6月に高裁が訴えを棄却して解雇が認められた。

1 コメント:

ミネルヴァ さんのコメント...

先日の記者会見直前では僕の周りには同情的な人が結構いましたので、あのyahooのアンケート結果は実際の世論に近いと見ています。まあ世間の同情というのは、科学的な議論というよりかは「罪と罰のバランスが取れていないのではないか」ということかと。一部の学者は批判一色ですが一面的な見方しかできておらず説得力に欠けます。これは科学者としての適性だけの問題ではなく罪と罰のバランスの問題でもある。週刊誌の記者が小保方氏の自宅に一週間張り付いたりするなどメディアスクラムや一部の輩に人格攻撃されるなど、過剰とも言えるような私刑(社会的制裁)を加えられたので、「小保方氏一人生け贄にして魔女狩りのように過剰なバッシングを加えるのはかわいそう。共著者や指導教官、理研の責任はどうなのか。」ということで同情的な人が多いんだろうと思います。犯した罪に対する私的な刑罰が重すぎるので罪と罰のバランスを取ろうよということかと。これが麻原彰晃だったら世間の反応は全く違っていたでしょう。無差別殺人に対する世間の処罰感情は強いでしょうがちょっとしたごまかしや嘘でその場をしのぐという軽い罪なんて大抵の人は経験あるでしょうからひかくてきかんようなんでしょう。まあこの件は注目度が高く億単位の税金使った研究であり公共性は高いはずなので、世間を欺いた場合は法(明文化されたルール、罪に対する罰の軽重)に基づかない社会的制裁(メディアスクラムや私的な集団リンチ)を加えられるのは、法の限界を補完する意味ではある程度やむなしかと思いますが、行き過ぎた個人攻撃はやはりバランスを欠いているかもしれません。まあ小保方氏が有利に進めるためにあの会見を開いてまた一部から叩れるのは自業自得かもしれませんが、外野は必要以上に個人攻撃に走らず、あとは粛々と「法」に基づいた手続きにしたがって科学者としての罰を受ければいいんじゃないかと思います。

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