2013年12月10日火曜日

中韓の防空識別圏は、国際条約への適合度が異なる

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中国風の防空識別圏に対抗してか、韓国が防空識別圏を拡大したが、この二つの違いについて明確に意識していない報道や論者が多いように思える。どうもメディアは「海運自由の原則」に注意を払っていないようだが、中国風の防空識別圏はそれを犯し、日米韓の防空識別圏はそれに順ずる運用になっているところがポイントだ。米国と事前協議があったか否かは大きな問題ではない。

大原則を確認しよう。公海上の飛行は自由であり、それを妨げたり干渉したりする事はルール違反とされている。「海洋法に関する国際連合条約」の第八十七条「公海の自由 (b)上空飛行の自由」があり、「公海に関する条約」の第二条(4)「公海の上空を飛行する自由」と言うのがある。これらは臨検や飛行妨害を許さないが、航空機の監視は問題ない。

中国風の防空識別圏だが、2013年11月27日の人民網日本語版を見ると『他国の航空機は設定国の規定に従い正体、方位、飛行計画などの情報を報告する必要がある。さもなくば設定国は追跡、監視、さらには排除、阻止、強制着陸などの措置を講じることができる』と主張しているので、公海上の飛行を妨げることになる。

日米韓の運用では、防空識別圏を通って領空に侵入するときは飛行計画書(フライト・プラン)を提出を求め、領空に侵入するまでは排除、阻止、強制着陸などの措置は講じていない。公海上を飛行するのは自由だからだ。中国の主張は国際条約への適合度と言う観点で、日米韓の運用と大きく異なる事になる。

「国際条約違反をしますよ!」と宣言したので、日本のみならず世界中から批判を受けているのが中国だ。尖閣諸島の領有権問題への圧力のつもりだったのであろうが、19世紀中頃に国際的慣行として定着し、20世紀に国際条約としてルールが固まった「海運自由の原則」に挑戦することになっている。パワー・ポリティクスの観点から米国が譲歩すると主張している論者も多いのだが、問題をよく理解しているのか心配だ。

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