2013年10月18日金曜日

非正規雇用の年限を5年から10年にできるか?

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改正労働契約法の第十八条で、通常は1年ごとに更新される契約社員などは、5年間で無期雇用にしないといけないと明記された。一部から評判が悪いこの改正、国家戦略特区ワーキンググループで10年まで更新できるように、再改正を目指すことが決まったそうだ(NHK)。

ただし正式に公表された文章は無く、報道機関ごとに捉え方が異なっている(雇用特区は断念、有期は10年へ?)。何はともあれ、もはや特区の話しではない。

要するに特区構想自体が破綻したのだが、何か手柄が無いと支持率が落ちると思ったのか、新たな方向性を打ち出したと言う事のようだ。しかし実現可能性は微妙な感じがする。改正労働契約法に書かれた5年は判例を元にしているからだ。

1974年の東芝柳町工場事件の最高裁判決などの判例法理では、有期労働契約でも反復更新により実質的に無期になっていた場合や、雇用継続につき合理的期待が認められる場合には、有期契約でも無期契約と同様に扱うことになっていた。

機械的に5年も続けて雇っていたら判例法理が示す状態になっていると考えられるため、改正労働契約法の第十八条は制度改正と言うよりも、暗黙の制度を明確にしたと言える。“実質的に無期”なんて3年連続でもそうだと思うし、ましてや9年連続で更新されて翌年が無いなんて思う人は少数であろう。

有期雇用の無期転換は制度改正に思った人が多いようだが、実は現状維持だったわけだ。現状維持を動かすには、かなり強いリーダーシップが必要になる。そして、あまり実態上は意味が無い。無期と言っても職務や勤務地を明確に決めておけば、判例から考えるに整理解雇は行いやすいからだ*1

こういう右往左往が行われるのは、雇用ルールに関して官邸や評論家に十分な知識が無いためかと思われる。NHKの報道では『労使間の紛争を防ぐため、政府が過去の労働裁判の判例を分析し、解雇が認められるケースなどの目安をガイドラインとして、企業に示す』ともあるのだが、まずはワーキンググループに参加した人から目を通して頂きたい。

そして官邸が何か成果を出したいのであれば、ガイドラインで満足するのではなく、それを民法に明記する事をお勧めしたい。大企業の人事部は判例集などを見ているであろうし、中小零細企業はあまり法令に縛られずにのびのび経営しているようだから、ガイドラインが意味を持つのかは疑問だからだ。しかし条文にしておけば、ある種の不確実性を減らすことができると思うし、雇用拡大につながるかも知れない。

日本の民法典の伝統からはみ出る気がするが、そんなに大きな反対は無いであろう。結果的に無期ジョブ型雇用を拡大するナッジ政策になりそうだが。

追記(2013/10/18 15:34):18日付で「国家戦略特区における規制改革事項等の検討方針(案)」が出ていた。

*1整理解雇の四要件は職務と勤務地の限定が無い正社員に関する基準である。また普通解雇の場合でも正社員であれば即解雇できずに異動や再教育を求められるが、職務限定されていれば異動を求められる事は無いであろう。もっとも何年も雇っているのに、職能不足と言うのは考えづらいが。

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