2013年7月10日水曜日

先進国と途上国の労働者は競合するのか?

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代替性の高い貿易財であれば、国際競争は生じる。開発途上国にある労働集約的な軽工業は、途上国間で熾烈な競争があると考えられる。しかし、先進国と途上国の間で国際競争は大したものでは無く、むしろ補完的だ。また、非貿易産業に従事している労働者の間では、競合関係にはなりえない。

アパレルの生産小売業者であるファーストリテーリング社のブランド「ユニクロ」のビジネスを分解してみよう。途上国で衣類を生産してもらい、先進国などで販売している。トマトは黒歴史だから言わなくていい。ユニクロに卸している工場は厳しい国際競争があり、労働者の賃金も均質化していくのであろう。しかし、ユニクロの店舗の店員は、国際競争にさらされるのであろうか?

労働者は、そうは国境を越えられない。言葉の壁もある。貧乏なミャンマー人を日本のユニクロの店舗で時給100円で働いてもらう事は不可能であろう。語学留学などでやってきた中国人は、安い賃金で我慢するのかも知れないが、全体としては数に限度はある。結局、日本で店員を確保するには途上国よりも高い賃金を払わざるをえない。

バラッサ=サミュエルソン効果として知られる上述の現象は、非貿易財を生産する単純労働者の賃金が、先進国と途上国で異なる理由を教えてくれる。断絶した労働市場を考えれば、「ユニクロの店員のような単純労働の賃金が新興国に近づくことは、資本主義の宿命」とは言えないわけで、経済評論家のグローバル資本主義論は経済学的な議論ではない。

生産性の改善か、時間あたり賃金の上昇で下がる単位労働コストを示して、賃金低下を主張しているのが分からない。賞与や残業代を含めた年収の減少と、時間あたり賃金の減少の見分けも相変わらずついていないようだ。OECDの統計では、日本の実質ベースでの時間あたり賃金は、そう大きな変化は無く、むしろ上昇しているぐらいなのだが*1

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