2013年6月30日日曜日

アリストテレスの説は理屈のついた明確な主張をしていたからガリレオに打破された

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擬似科学ニュースが、アリストテレスとガリレオの説を比較すると、当時の実験データからはアリストテレスが正しかったと主張しているのだが、アリストテレスの説に思い違いがあるようだ。

アリストテレスは「重いものほど速く落ちる説」ではなく、「重さに比例して早く落ちる説」を唱えていた。理屈もつけられていた。土元素が多いものが重い、それが多いものほど速く落ちる*1。アリストテレスによれば、2Kgと1Kgの同じ物体であれば、前者が2倍の速度で落下する。

だからガリレオとしては、落下速度と重量の関係を確認すればよかった*2。伝説ではピサの斜塔を使ったが、実際は右上の滑り台にボールを走らせて、重さに関わらず落下速度がほぼ同一である事を示したとされる。

アリストテレス説の否定に成功したガリレオは、傾斜から平地に向かったボールが一定速度で動き続けることに気付く。このボールの動きを記録して、数学を使って動作を表現する事で、慣性の法則が記述された。恐らく人類初の数理モデル、ただし慣性の理由は説明されない。

アリストテレスとガリレオの学説対立には影響は無いのだが、空気抵抗が実測データに(誤差では無く)バイアスを与えて、ガリレオのモデルの適合度を落としていたのは間違いない。しかしガリレオは、傾斜を使う事で速度をゆっくりにし、空気抵抗を抑えていた*3。低速では、バイアスの影響を無視できたはずだ*4

アリストテレスが重いものほど早く落ちるとだけ言っていたら、ガリレオがそれを否定する余地は無かったと思うが、重さに比例するような理屈がついていたので否定されてしまった。ガリレオの方は、私が知る限りは、慣性や引力に説明はつけていなかったはずなので、論理ではなく観察された事象だけで議論していた事になる。

何はともあれガリレオの故事は、一般には理屈に頼ることを戒め、実験を重んじるように教えるときに使われている。さて、LNT仮説を統計的にどう見るべきかと言う議論は、別エントリーに改めて記述した。

*1現代では「土元素」なんて妄想の産物でしかないが、土元素は引き合う性質があり、地面に土元素が集中していると思われていたようだ。

*2土元素の含有量と言っているので、同じ重さで違う材質で落下速度が同一である事を示しても、アリストテレス説の打破になる。そういう実験も行われたのであろう。

*3この時代になると誰がどの実験を行ったか正確には分からないのだが、もしガリレオが空気抵抗バイアスに悩まされたとしても、それは良く知られていた現象でバイアスの説明としては説得力があったはずだ。なお、真空は理論的に存在できないとされていたが、ガリレオの後の世代で存在できることを発見される。

*4一般には記録可能な速度にするために、傾斜を使ったと言われている。

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