2013年2月2日土曜日

村上尚己─池田信夫論争にあるWoodfordの主張について

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アベノミクスに関してのエコノミストの村上尚己氏の主張を、経済評論家の池田信夫氏が批判しており、そこで池田氏が村上氏にWoodford(2012)を読めと言っている。量的緩和の無効性を示す前半部分はともかく、後半部分は村上氏の主張をサポートしかねない部分も多々あるのだが、池田氏はそこは読んでいないのであろうか。

Woodford(2012)ではゼロ金利制約下の量的緩和が機能しなかった事も指摘しているが、結論部分では財政政策と名目GDP水準目標のポリシー・ミックスを主張している。名目GDP水準目標の導入は、時期尚早の利上げが行われないことを市場に約束する目的だとP.87に書いてあり*1、時間軸効果を狙ったものだ。差異はあるもののインフレ目標政策と狙いは同様であり、ウッドフォードはインタビューで、米連銀の政策は支持しており(Washington Post)、名目GDP水準目標はインフレ目標からの離脱ではなくて強化だと説明している(Bloomberg)。

村上氏の主張を要約すると、インフレ目標政策で景気回復と同時に過剰なインフレやバブルを抑制できると言うもので、実はウッドフォードの主張と近い。相違があるのは、村上氏が量的緩和の拡大を重視しているのに対して、ウッドフォードは時間軸効果を重視しているように思える所だが、ウッドフォードが全面的に中央銀行の市場介入を否定しているかと言うと、実際のところはそうでは無いように思える。MBSなどの危険資産の購入はなお有効かもとしているからだ*2

*1Woodford(2012)のP.87に"At the same time, commitment to a nominal GDP target path by the central bank would increase ..."とある。

*2P.86に"Additional purchases of MBS by the Fed might instead still be useful ..."とある。

1 コメント:

POM_DE_POM さんのコメント...

「論争」という程たいそうな話ではなく、単なる新刊の宣伝でしょう。
記事の内容自体も、1/21日付けのレポート”「アベノミクスでバブルが起きるだけ」という駄論”に加筆しただけで、ほとんどが転載です。
(追記部分が、池田氏の名指しと、池田氏が反応したバランスシートの図)

村上氏については、個人的にりふれ派と認識しています。
新刊も日銀陰謀論+アベノミクス賞賛(そりゃ、セルサイドの人間には円安株高は歓迎だ)のようですし。狙っているターゲット層もアンチ池田派と重なるでしょうから、村上氏にとっては「してやったり」ではないでしょうか。


改めて過去記事の「りふれ派の社会的機能について考える」を読んで思うのは、1、2は基本的には変わらないもののアップデートはしており、3、4の状況は大きく変わった・・・といった所でしょうか。5は永遠なり(笑)
http://www.anlyznews.com/2012/07/blog-post_16.html

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